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「性的同意」について調べてみて思ったこと | にどね研究所

「性的同意」について調べてみて思ったこと

雑記

このあいだのTBSラジオ「アシタノカレッジ」の宮台真司ゲスト回がわりと反響があるらしい。

僕が「これおもしろかった〜」みたいにツイートしたら、パーソナリティーのキニマンス塚本ニキさんが反応していたので気づいた。

そういえば僕は「性的同意」についてあまり良く知らなかったなぁと思って、そっちをちゃんと知らないでいるのもよくないと思い、ググってわかる範囲で調べてみた。

そしたらどうも、セックスなどの前に口頭や書面で同意をとるみたいなことは必ずしも意味しないらしい。「YES/NO枕」みたいなのは言わずもがな。

僕のイメージでは「口頭で『これからセックスしても大丈夫?』みたいに同意をとる」みたいな感じだったのだ。ああ、適当なイメージだったなとちょっと反省した。

性的同意については、慶應の学生がまとめたという「性的同意ハンドブック」が(比較的)ちゃんとしている気がする。

Sexual consent handbook 性的同意ハンドブック 慶應 on Strikingly

実はこれだけ読んでもよくわからない、というのが一般的な感想だとは思うが……。

思い出したのは、僕が大学に入ったとき(2004年)に、「アカハラ」「アルハラ」などについてのチラシが配られていたこと。この「性的同意ハンドブック」もそういうものの延長線上にあるように思った。とかく大学生活というのは、恋愛関係も含めていろんなトラブルに巻き込まれやすい。そういうことで嫌な思いをするのを防止しようという意味合いがあるんだなと。

で、もしかしたらこっちのページのほうがわかりやすいかもしれない。

性的同意 | 性についてお悩みの方・学びたい方 | PILCON

このページにはこう書いてある。

性的同意のポイントとして、以下が挙げられます。

・NOと言える環境が整っている(非強制性)

・社会的地位や力関係に左右されない対等な関係である(対等性)

・1つの行為への同意は他の行為への同意を意味せず、その都度の確認が必要(非継続性)

性的同意 | 性についてお悩みの方・学びたい方 | PILCON

それでちょっと思ったのが、自分も「被害者」みたいな経験はしているな〜ということだった。

たとえば、20代前半の頃に付き合っていた彼女に一時期、「ある場所」での性行為をするのをずっとやらされており、僕は落ち着かないのと、状況がなかなか特殊だったので、かなり義務的にやっていた。あるとき「そういう状況ではしたくない」と伝えたらしなくなった。でも、言い出すのにけっこう時間がかかった。向こうがやりたがっていたのと、向こうも僕が喜んでいるだろう的な雰囲気で接してきていたので言い出しづらかったのだ。

他には、僕に好意をいだいているであろう女性がめちゃくちゃボディタッチしてくる、ということにも何度か遭遇した。おそらく「ボディタッチすれば落ちる」みたいな女性誌とかのテクニックを実践していたのではないかと思うのだが、こっちはそういう知識はそもそも知っているし、さすがにそんな単細胞ではない(というかこういう女性誌的なテクニックは男性を馬鹿にしすぎではないかと思うのだが)し、(その時点で)好意を持っているわけではない女性にベタベタ触られてもなんか失礼なやつだなとしか思わない。でも「やめてください」というのは何か言い出しづらかった。「無礼者!」とでも言えばいいのだろうか……だいぶ違う気がする。

あと、ある女性と三回目に会ってデートに出かけようというときに、いきなり抱きついてくるということにも遭遇した。「何だ!?」と思ってびっくりしたが、「何かよくわかんないけど盛り上がってるみたいなので仕方ないか…」ということで振り払うということはしなかった。ちなみにこちらの気持ちとしてはびっくりしただけであり、別に何か気持ちが盛り上がるということはなかった。「いやいや、落ち着け」とでも言えばよかったのだろうか……何かそれも失礼な気がする。

ほかにも、これは性的同意と関係あるか微妙だが、僕が非常に落ち込んでいるときに食事に誘ってくれた女性がいた。でもなんとなく、その女性が僕に好意を持っていそうなことは理解していた。ただそのときは本当に落ち込んでいたので、なんか嬉しいなと思って誘いをOKしたのだった。でも実際に食事の場に行ってみると、「この人が落ち込んでいるときにゲットしよう」的な雰囲気はわりと露骨に感じた。落ち込んでいてもそういうことにはさすがに気づくので、あまりいい気持ちはしなかった。そして実際に危険に遭遇した。

それでこれもまた微妙な事例だが、女性の方と仕事の打ち合わせしようとしたときに、相手に夜の飲み屋を指定されたということもあった。そのときは行ってしまったが、実際に危険に遭遇し、それから1ヶ月くらい落ち込んだ。精神的ダメージはかなりでかかった。今思うのは、そういう危険を少しでも感じたら絶対に行ってはいけないということだ。

ちなみにこれは自分の「被害側」のことばかり書いているが、聖人君子ではないので「加害側」である部分もあったと思う。いや、自分はわりと暴力的なコミュニケーションにはたぶん敏感な方だと思うので、少ない気もするが、どうなんだろう……。まあでも、あると思う。20歳前後〜20代前半はまごうことなきクソ人間であったことは間違いない。問題になっていないことに、相手の赦しがあると思うようにして、それをありがたいと思うしかない……。

あと、自分が「権力」の側にいると、かなり気をつけないと簡単に「加害側」になりうるなと思った。しかも、これは男女関係ない。権力というのは、持っている前に思っていたよりも10倍くらい、扱いに気をつけなければいけないものだとは思う。

いろいろ思うところはあるが「性的同意」はかなりファジーなもので、難しい。ただ、「お互いがイーブンな関係でいるか」というのは、こういう話以外でもチェックしておくべき項目としては大事なものだと思う。

それと、(あくまでも自分ひとりをサンプルにしたとき)危険に遭遇するのは自己肯定感の低さみたいなところと関係している気がした。僕の場合、自分が好意を持っているわけではない女性にも、好意を寄せられるとそれはそれで嬉しいので、誘いに乗ってしまう。でも、それで実際に行ったとしても、自分のこれまでの失敗経験によれば、心が動くことはなかった。直感に従うというのはけっこう大事にしたほうがいいのではないかと思う。「相手に失礼かもしれない……」とか思うから断れない。失礼でない断り方を面倒くさがらずにきちんとすればいいだけだ、ということなのではないか。

あと、それこそ宮台真司がよく言っていることだが、「相手をよく見る」というのは本当に大事だ……。相手のことをしっかり見れば、ある程度は、どんなことを考えているか、嫌なのかそうでないのか、ということを、少なくとも考えることはできる。自分の思い込みや願望、「相手にこうあってほしい」「こう考えているはずだ」という決めつけにしがみつきたくなる気持ちを勇気を出して手放して、相手のことをちゃんと見て、尊重する、ということが大事だということ(もっとも、それと同じくらい自分も大切にしなければいけない。自己肯定感の低いことに自覚がある自分はなおのこと)。で、それができたときにむしろ、人間的な関係性が結べるのではないかということ。そういう意味でやっぱり勇気って、とても大事だと思う。

でも考えてみると、それは性愛の関係だけでなく、すべての人間どうしのコミュニケーションに言えることだな、と思った。

(了)

※アイキャッチの写真は、渋谷上空を低高度で飛んでいた飛行機です。本文とは全然関係ないですが、渋谷を歩いているときに見かけて「お、羽田新ルートや!」と思って思わず撮ったやつです。

編集者、ライター。1986年生まれ。2010年からカルチャー誌「PLANETS」編集部、2018年からは株式会社LIGで広報・コンテンツ制作を担当、2021年からフリーランス。現在は「Tarzan」(マガジンハウス)をはじめ、雑誌、Webメディア、企業、NPO等で、ライティング・編集・PR企画に携わっています。
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