今月8日、能登半島地震の被災地支援ボランティアに行ってきた。自分がときおり出入りしているNPO法人ZESDAの理事長・桜庭大輔さんから誘われ、良い機会だと思い行くことにした。ZESDAは国内外のさまざまな業種の20-50代のメンバーが集まっていて、おもに地方創生に取り組んでいる。なかでも石川県鳳珠郡(ほうすぐん)能登町にある「春蘭の里」の支援が大きな柱のひとつだという。
自分は株式会社LIGに勤務していたときに長野県信濃町に地方創生の仕事でよく行っていて、ほかにも大分県の豊後大野市、長崎県の壱岐島、広島市、京都市、帯広市、海外だとフィリピン・セブ島にも行かせてもらった。旅行と違って現地で働く人たちと仕事で関わって、思いを聞いてきた。今回は、被災地にボランティアで行くということ、それと「春蘭の里」について自分なりに感じたこと/考えたことを写真や動画とともにレポートしていきたいと思う。
その前に……「ボランティア迷惑論」の拡大に関して
いきなりだが、この話題には触れざるを得ない。僕は2011年の東日本大震災の際にも宮城県石巻市にボランティアに行ったが、当時と比べても今回の能登半島地震では「ボランティアは迷惑」論がSNS上で拡大していたと感じる。1995年の阪神大震災は「災害ボランティア元年」だそうだが、果たしてそのときはここまで批判があったのだろうか。2011年の東日本大震災の際もこうした論調はあったが、この2024年には「迷惑論」がとりわけ大きくなっている。
今回のボランティアでは、「春蘭の里」でリーダーシップを取ってきた多田喜一郎さんにお世話になったが、多田さんは「来てくれるだけで嬉しいんだ」とおっしゃっていた。災害に遭って日常生活を取り戻すまでは、とにかく住民の不安や孤独感は大きいという。そんななかで「気にかけてくれている人がいる」ということをじかに感じられるだけでも助けになる、ということだ。
僕も行く前は、SNS上の「ボランティア迷惑論」に無意識に影響されていたのか、「迷惑になるだけなんじゃないか……」と不安だったが、現地に行って多田さんをはじめいろんな人と話してみて、そのような雰囲気を感じることはなかった。だから、ボランティアに行こうと思ってまだ行っていない人は、まずは行ってみるのがいいと思う。もちろん最低限の準備は必要だけれど、それについてはこの記事の最後で書きます。
金沢〜能登町まではでこぼこ道をゆく
3月8日(金)の夜に金沢駅に集合し、レンタカーをして能登町に向かった。僕は実は「春蘭の里」に行くのは初めてだったのだが、2時間ぐらいかかり、「めっちゃ遠い……」と思った。でも普段は、東京からは羽田空港から〈のと里山空港〉行きに乗って1時間で行けるらしい。今回は、のと里山空港のレンタカー屋さんが営業していないため、金沢駅からの出発になった。
道中は、クルマの通行はできるけれどもでこぼこ道が多かった。しかし地震発生から2ヶ月で多くの幹線道路が通れるようになっているというのは、建設会社や自治体の方々が急ピッチで復旧を進めたおかげなのだと思う。
「春蘭の里」の状況
夜中に「春蘭の里」に到着し、ZESDAがワーケーション向け宿泊施設へのリフォームを支援をしたという「木場邸」に一泊。夜中3時半に就寝して翌朝8時に起き、ボランティア作業に向かうというハードスケジュールだった。
ボランティア先のお家へ
以上は朝の様子だが、天気がすぐに変わるようで、しだいに晴れてきた。
今回清掃作業を行ったのは、もともと町で唯一の診療所だったお家だった。持ち主のお医者さんが亡くなられてからは、多田さんが設立した「一般社団法人 春蘭の里」がカフェ兼ゲストハウスとして今年から運用しようとしていたが、地震で内部の土壁が大きく崩れてしまい、使えなくなってしまったとのこと。今回の作業の目的は「この家を再び使えるようにするための基本的な清掃作業」だった。
道路など外の片付けは重機等を使って専門家が片付けてくれるが、家の「内」はそうもいかない。その部分を災害ボランティアが担うことになる。災害時はただでさえ他のことで大変ななかで、「自分の家の片付け・清掃」は本当に気が重いということは、東日本大震災でボランティアをやったときも感じたことだ(石巻では津波で家屋内に大量に流入した土砂のかき出しを行った)。建設会社の方のように専門技能がなくても、そういう部分をボランティアが埋めることができるのだと思う。
実際にやった作業
清掃を始める前の状況は、以下の動画のようなものだった。
家じゅうの土壁が崩れてしまい、散乱してしまっている。他にも家財の多くが床に散乱してしまっていたりした。
お昼ご飯を挟んで、まずは一部屋の片付けが完了。
作業のビフォー・アフター
最終的には、7人(+後から来た地元の若い衆2人)がかりで1日で家全体がおおまかに清掃することができた。
2度目の災害ボランティアで気付いたこと
というわけで一旦この記事は締めたいが、最後に今回2度目の災害ボランティアをやってみて気付いた、超・基本的なことについて書いておきたい。
災害ボランティアに行く前の事前準備に関しては、いくつか参考になるページがある。
・ボランティア活動に入る前の準備(京都府災害ボランティアセンター)
・被災地のボランティアに行く前に準備すること(ボランティアプラットフォーム)
まず持ち物だが、実作業には以下のようなものが必要である。
- 丈夫な軍手
- 汚れてもいい服(寒そうであれば汚れてもいい上着、スポーツ用のアンダーシャツなど)
- 長靴(靴がかなり汚れてしまう)
- マスク(防塵のため)
- 非常食
- 水分(多めに用意)
- おやつ
軍手は、できればコンビニで買えるものではなく、ホームセンターで買える丈夫な作業用手袋がいいと思った。汚れてもいい服については、僕は寒さに備えたものを特に持参しておらず、トレーニング用のアンダーウェアと上着の2枚でやった。動いて暑くなるので大丈夫かなと思ったが、それなりに寒かった。作業着のアウターが必要だったと思う。
長靴に関しては、現地にあると聞いていたので持っていかず、現地のものを使わせてもらったが、持っている人は持っていったほうがいいと思う(現地で人数分足りないなどを考慮して)。
また被災地なので、当然ながら食料、水、スマホの充電器などは十分に用意しておく必要がある。方向性は真逆かもしれないがキャンプに行くのと同じぐらいにDo It Yourselfで、すべて完結できる装備を町でしてから行くのである。コンビニや飲食店などでの現地調達は難しい前提で動かねばならない。
また、実作業は工事現場とも似たところがある。まず、最初に作業の目的と手順を全員で確認すること。今回の場合は「基本的な片付けを終わらせ、家の持ち主が修繕などにモチベーションを出せるようにする」が目的である。あまりにもものが散乱していて絶望的な状況を改善するのが我々の役割だった。その際には、「これ終わったから、じゃあ次はこれやろう」と場当たり的に行動するのではなく、「これを終わらせ、その次にこれをやって、さらにその次はこれ」という作業イメージ、完了イメージをあらかじめ明確にしておくことが必要だと感じた。また、各人の役割分担を明確にしておくことで、作業の効率化もしやすくなる。
それと、おやつタイム(または、もぐもぐタイム)は必須である。もしかしたら「被災地でおやつ!?」と思う人もいるかもしれないが、実際にボランティアをやってみると、どうしても「しっかりやらねば…!」と意気込んでしまう。それ自体は悪いことではないが、必死にやるあまり、何時間もぶっ続けで作業してしまう。つまり健康リスクがある。他の人を助けるためには、まずは自分が万全のコンディションであることが基礎でなければならない。
また、自分が現場で言っていたのは、「休憩はなるべく1時間ごとを目安にとろう」ということだ。「休憩は各自でいいでしょ」という意見もあったが、それでは「あの人が作業し続けているから自分も」というかたちで負のループに陥ってしまうかもしれない。作業は体力を使うものなので、適度な休憩をとりつつ、根を詰めすぎずに心理的にも休憩の時間をとることが必要だと感じた。被災地は大変な状況といえど、暗くならずに楽しくやるのも大事だと思う。
また、今回行ったメンバーは男性のみだったが、被災地支援ボランティアは女性も行っていいし、行きたい人は行くのがいいと思う。力仕事が多いとはいっても、自分のペースでできるので問題はないはず。もちろん、通常の都市と違って危険はあるので、自分で自分の身を守ることは前提として。
NHKのこちらのページは、さまざまな情報がまとまっているので参考にどうぞ。→石川県 ボランティアや寄付をしたい 北陸応援割を使いたいと思ったら NHKの関連記事をまとめました 能登半島地震 | NHK
というわけで今回は主に実作業のレポートをしてみたが、次回は能登に行っていろんな人と話したり、実際の場所を見たりして考えたこと/感じたことをまとめてみたい。
(続く)
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