東京・稲城に建設中のジャイアンツタウンに行って、多摩の価値について考えた

地理

東京・稲城のよみうりランドに建設中のジャイアンツタウンに行ってきた。

ジャイアンツタウンとは、読売グループが稲城市のよみうりランドとジャイアンツ球場を中核にして建設中の新しいまちづくりプロジェクトである。

「TOKYO GIANTS TOWN」構想特設ページ|読売ジャイアンツ公式サイト

稲城は、僕が今住んでいる横浜市青葉区から稲城市は車で行くとけっこう近くて、30分ぐらいで行ける。多摩に用事があったり、中央高速に乗るときはしばしばこのあたりを通るので、何やらどでかいものを建設中なのが気になっていた。

もともとよみうりランド周辺は周辺と比べて標高が高く、「丘の湯」という温泉があったのだが、コロナ期に営業をやめてしまい、潰れてしまったのかと思っていた。今回新しく「花景の湯」という温泉が新しくできたので、そこに行くついでに建設中のジャイアンツタウンを見てみようと思ったのだ。

まずは車をHANA-BIYORIという、よみうりランドそばのフラワーパークの駐車場に停め、温泉に行く前の運動がてらにランニングをしつつ周囲を回ってきた。

ここは旧ジャイアンツ球場。主に2軍戦が行われていて僕も去年行ったりした。駐車場もあり、客も少なく快適に見れるのでなかなかいい。夜に行ってみると夜景がなかなか綺麗であるが、この資産は今まであまり生かされていなかったかもしれない。

よみうりランドは、丘の北側の多摩川近くにある京王線「京王よみうりランド駅」と、南側の小田急線「読売ランド前駅」のどちらからも行ける。

京王よみうりランド駅から行く場合は、ゴンドラ「スカイシャトル」に乗って丘の上まで行くことができる。この写真は丘の上から多摩川方面を撮ったものだが、眼下には調布方面の夜景が広がる。

ちなみにゴンドラに乗らずとも、猛者であれば階段で登っていくことができる(「巨人への道」といわれる遊歩道)。

階段は283段で、途中ではジャビットがいろいろと励ましてくれる。登りきるとこんなイラストが出てくる。

新ジャイアンツ球場は「巨人への道」から少し離れたところにあるので、走りながら向かうと見えてきた。もうかなり建設が進んでいる。

全然人影はないが、スタジアムは煌々と照らされていた。小田急側から京王側へは移動する車も少なくないので、宣伝の要素もあるのかもしれない。

かなりできている。旧ジャイアンツ球場は窪地のような場所にあったが、新ジャイアンツ球場は丘のほぼてっぺんにあり、見晴らしのよい場所である。

完全オープンなスタジアムだし、もしかしたら東京ドームよりもよい球場になるんじゃないだろうか?

球場見学が終わったら走ってHANA-BIYORIまで戻り、すぐそばの「花景の湯」に行った。

以前の「丘の湯」に比べると料金が2,800円とかなり高くなったが、実際に入ってみたらとても綺麗で広く、良かった。

さすがに風呂にスマホは持ち込めないので写真は出せないが、露天風呂からの景色が凄まじかった。

スカイツリー東京タワー新宿ビル群から皇居や東京駅周辺まで全部見えたのである。

夜景もいいけど平日昼間に来たいなと思った。たくさんの人が都心で一生懸命働いているのを見下ろしながら、ゆっくり温泉に浸かるのである(笑)。というか、そういうふうに設計されているとしか思えない。

稲城のある多摩丘陵は温泉が出るので、ポテンシャルは凄いと思う。何より都心を見下ろせる天然温泉は唯一無二である。下には多摩川も流れ、自然豊かな環境で、陽当たりも最高である(向陽台という地名もあるぐらいだ)。

僕は大学時代、横浜市北西部の自宅から多摩地域の国立市にある一橋大学に通っていた。

最初は、ニュータウンからニュータウンへという通学に、「なんで大学でまでこんな田舎にいかなきゃならんのだ」と思っていた。しかし、バイクや車を使うと意外と近いことに途中で気付き、多摩地域のいろんなところに行くようになった。

多摩といえば、ジブリ映画の『平成狸合戦ぽんぽこ』や『耳をすませば』などのイメージがある。

『ぽんぽこ』の舞台は多摩ニュータウンで、その開発がテーマである。『耳すま』は聖蹟桜ヶ丘のあたりが舞台だ。僕も昔は最初は「『ぽんぽこ』かよ〜笑」などとバカにしていたけど、今は多摩に行くとテンションが上がるようになった。多摩丘陵エリアでは他に、川崎市多摩区の生田緑地や、すぐそばの岡本太郎美術館などもパワースポット感がすごかったりする。

多摩ニュータウン地域は、いわば「戦後中流の遺産」であり、若い世代は敬遠する向きも少なくないかもしれない。しかし稲城市や多摩市などは住環境としては非常によい。『ぽんぽこ』では、開発による自然破壊が問題になっていたけれど、一方でジャイアンツタウンは戦後中流レガシーの再活用を通じて、いわゆる「多摩格差」解消の起爆剤にもなるかもしれない。

自分としては、あんまり人が来すぎたり、緑が少なくなるのは歓迎できないが、一方で今は不動産価値などをみると東京都心が高すぎ、本来住環境として価値の高いはずの多摩地域の良さが見過ごされているとも思う。

東京都心の価値が高いのは、「みんなが欲しがっているから」という、広告的価値がかなり大きいと思う。冷静に考えて、コンクリートばかりの東京都心の住環境としての価値はそれほど高くない。そこには糸井重里的、「ほしいものが、ほしいわ」的な広告的な仕掛けがあるだけだ。

自然豊かな多摩の良さが見直されるというのは、価値の転倒である。今までの価値観が揺さぶられるといいなと思う。

(了)

編集者、ライター。1986年生まれ。2010年からカルチャー誌「PLANETS」編集部、2018年からは株式会社LIGで広報・コンテンツ制作を担当、2021年からフリーランス。現在は「Tarzan」(マガジンハウス)をはじめ、雑誌、Webメディア、企業、NPO等で、ライティング・編集・PR企画に携わっています。
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