ターザンで『プリズナートレーニング』シリーズ翻訳者・山田雅久さんに取材しました。いま「身体」を考える意味とは?(セルフ解説つき)

歴史

ターザンで、『プリズナートレーニング』シリーズ全作、他にも関連書『ストリートワークアウト』など、フィットネス書籍の翻訳を多数手掛けている山田雅久さんに取材しました。

バキの表紙でお馴染み! 日本の「囚人トレ」ブーム火付け役に、刑務所発の最新トレーニングを訊いてみた | Tarzan Web(ターザンウェブ)

企画の経緯を言うと、単純に自分が『プリズナートレーニング』を読んでトレーニングをやってみて、その効果と本としての面白さを実感したからです。もちろんアメリカの翻訳書なのですが、日本でこの本を出すことになった企画の経緯を聞きたいなと思い、これらの文献でなぜか(?)全作クレジットされている山田さんがキーパーソンなのではないか!? と思い、取材を打診してみたのです。

プリズナートレーニング(自重トレ)は何がいいのか?

記事の解説の前に、「なぜプリズナートレーニングが優れているのか?」ということを述べておきます。まあ、過去にもこのサイトでいろいろ書いているのですが、少し要約すると……。

1つ目は、何と言っても「お金がかからない」。これは大きいです。ジムに行く必要もなく、パーソナルトレーニングにお金を払わなくてもいいと。自分の持論なんですが、カラダを動かすことってお金をかけずにできる趣味だと思うんですよね。だけどさまざまなメディアの情報によって、「カラダを動かすことにもお金をかけないといけない」ということになっている。そういう思い込みを外してくれるという点で革命的であり、かつ人間的なものだと思うのです。

2つ目は、「スキマ時間にできる」。僕も日々やっていますが、毎日5〜10分くらいしかやっておらず、でもめちゃくちゃ効果が出てます。腹筋もそろそろ完全シックスパックになりそう……。器具がいらないし、着替える必要もないし、ジムに行くために移動しなくてもワークデスクのそばでできるので、続けやすいです。トレーニングはなにより継続性が大事で、継続できて効果が出るので楽しくできます。

3つ目は、「健康になる」。以前もオープンウインドウ仮説について紹介しましたが、ジムで器具を使った筋トレを激しくやると疲れて体調が悪くなったり、免疫力が低下したりします。健康になるためにトレーニングしてるのに、不健康になってるっておかしくない? と、いつからか感じるようになりました。それと、ウェイトやバーベルを使ったトレーニングって一見効率がいいように見えて、動きづらいカラダになってしまうんですよね。『ドラゴンボール』のトランクスがそういう状態になってましたが、これはリアルでもそうだなと思います。とにかく日々の移動を軽やかに、フットワークよくしたい。そのためには自重トレは非常にいいのです。

「身体文化」や「身体性」を批評的にみる

今回の記事では、上記のような前提はサラッと触れるだけにとどめています。プリズナートレーニングの思想的背景や、アメリカや日本のフィットネスカルチャーを浮かび上がらせるものにしたかったからです。

身体文化というのは、文化でありながら(これまで僕が仕事をしてきたような)カルチャー誌ではほとんど取り上げられることがありませんでした。「文化的であろう」とすると、どんどん(身体ではなく)精神文化のほうに傾いていってしまいます。

ところが近年、精神医療や脳科学などの医学的研究によって、精神に対して身体のあり方が大きく作用するということが、かなり明確になってきました。文化全体が「精神」に行き過ぎてしまって閉塞感を抱えているなかで、「身体」への批評性を社会的に積み上げていくというのは、自分にとって非常に大きなブルーオーシャンに思えます。

そのやり方は、ブルーオーシャンすぎて多岐にわたりすぎるのですが、今のところはトレーニングカルチャーにフォーカスしてみるのが面白いのかなと思っています。

「身体文化」や「身体性」を批評的にみるという営為は、長らく文化批評の世界では事実上タブーとなっていました。その理由はいろいろあると思いますが、日本の文脈に限っていうと、特に戦前期の軍国主義日本の時代に、行き過ぎた身体への管理が市民に不自由をもたらしていたことが大きいと思われます。また世界的には、かつてナチス・ドイツが身体管理を徹底的にやり、それが苛烈な差別やジェノサイドにつながったという歴史も、かなり尾を引いています。

▼これまでターザンWebでやったロングインタビュー企画はすべて無料で読めるので、ここに並べておきます!

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