謎の書籍『プロデューサーシップのすすめ』と、イギリス帰りの22歳が率いる謎のマイクロベンチャー出版社・紫洲書院

お知らせ

以前、編集を担当した『現役官僚の滞英日記』という書籍の著者である橘宏樹さん(現役官僚、現在ニューヨーク赴任中 @h__tachibana)から今年の春頃に依頼があり、『プロデューサーシップのすすめ』という書籍を目下、制作しています。

版元は、高校卒業後に単身イギリスに渡り、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)で犯罪科学を専攻したという謎の若者・竹本智志氏(22歳)の主宰する謎のマイクロベンチャー出版社「紫洲書院(しずしょいん)」です。

 

紫洲書院のYouTubeチャンネル「Shidzu Plus」で、ソシュールと近代言語学の始まりについて話す竹本氏(22歳)。全体的になんとなく醸し出される19世紀ヨーロッパな雰囲気が気になります。(元動画はこちらへ)

 

謎に包まれた出版社「紫洲書院」と、『プロデューサーシップのすすめ』という企画

紫洲書院はプリント・オン・デマンド(POD)といって、少部数でも書籍を作れるシステムを作り上げており、既存の出版社のように初版で数千部刷ると売れずに赤字になってしまいそうな企画でも出版することができるのだそうです。なお紫洲書院は、滋賀県・琵琶湖のほとりにある竹本氏の実家を拠点としているらしいです。

今回の『プロデューサーシップのすすめ』という書籍は、前述の橘さんが参画していて、「日本の技術と世界のニーズをつなげるプロデューサーの支援・育成を通じて、日本企業のグローバル競争力の強化を目指す」という目標を掲げるこれまた謎のNPO法人ZESDAが、各界で活躍するプロデューサー人材を招いて講演してもらった内容を書籍にまとめたものです。

実は出版業界では「共著は売れない」というのが定説になっています。今回は著者が全部で20人もいるので、もう全然、既存の出版システムにはなじまない企画です。そこで、少部数でも発行できる、かつなんか面白い若者がやっているということで紫洲書院から出版されることになったそうです。

20〜40代ビジネスマンに届く内容にしなければ!という話

僕は最初、橘さんから「編集をやってほしいんだけど」と言われ、非常に軽い気持ちで「なんか面白そう」と引き受けました。前にこのサイトでも書いたのですが、やっぱりセックス・ピストルズやリバティーンズみたいな、DIYでブリコラージュで反権威なものには、パブロフの犬のように「面白そう〜」と思ってしまうクセがあるのです。

でも、やってみたらものすごく大変でした・・・。

この書籍のコンセプトは実は、「イノベーターからプロデューサーへ」というものです。新規ビジネスの創出・イノベーションというと、イノベーター/アントレプレナーが注目されがちですが、それだけでなく彼らを支えるプロデューサー人材がもっと必要なのではないかそしてプロデューサー人材を育成するためのノウハウ集にしたい、という思いがあると橘さんからは聞きました。

ということは、言い換えれば、単なる論文集・講演録ではなく、ふだんビジネス書を読んでいる都市部の20〜40代ぐらいまでのビジネスマンたちに届く内容にしなければいけないのです。そのあたりは、もとの講演録の文字起こしにかなり編集を加え、できるかぎりビジネスマン向けの内容にしていきました。全体のトーンと方向性を揃えるための構成・編集はもとより、著者のみなさんとのコミュニケーションをしっかりとる、この部分が地味にけっこう大変でした。

自分としては他のたくさんの仕事と並行しながらだったこともあり、ここまでに約6ヶ月かかってしまいましたが、今回ようやくほぼ校了まで来ました。

すべての営業マン/コンサルタント的な人に向けた書籍

著者が20人いるということですが、そのなかには「クローズアップ現代」などを手掛けたNHKの小堺正記さん、アイドルグループ「夢みるアドレセンス」のオリジネイターである伊藤公法P、アニメ企画「のら猫クロッチ」の筒井一郎さんなど、エンタメ畑の人も登場しています。ただ、それだけにとどまらず、広くビジネス、クリエイティブからアカデミズムや社会貢献に至るまで、さまざまなタイプのプロデューサーが登場しています。

今回の書籍では、橘宏樹さんの参画するNPO法人ZESDAの代表で、同じく現役官僚である桜庭大輔さん@sakuchaan)が、書籍の始めと終わりで「プロデュースとは何か」ということを全体を通じてまとめ、理論化もしています。なのでそこだけ読んでも、「プロデュース」という仕事の全体像がつかめるようになっています。

特に自分がいいなと思っているのは、編集作業を進めるなかで桜庭さんから聞いたこんなコンセプトです。

『プロデューサーシップのすすめ』は、「自分は起業家やクリエイターにはなれない」「いつも調整ばかりで大変で、それが周囲になかなか評価してもらえない」「でも、イノベーションに貢献したい」という思いを持つ、すべての営業マン/コンサルタントのための書籍なんだ。

僕はどちらかというとクリエイター的なことをやるのが多いので、必ずしもそういう悩みがあるというわけではないのですが、特に自分がライターではなく「編集」の立場に立って仕事をするときは、たしかに「プロデューサー」的なことをしています。そしてその仕事の価値が、一般に思われているよりも、もうちょっと高いのではないか、という肌感覚はあります。「前に出るばっかりが偉いというわけではない、縁の下の力持ちも大事なんだ」というのは、とてもよくわかるのです。

あと、会社で働いていたときも、フリーになってからも、「営業マン」や「代理店の人」のような、いろんな立場の人たちの間に挟まって調整してくれる人のありがたみも、すごく感じるようになりました。文系・大卒のビジネスマンは、営業をはじめコミュニケーションの仕事をすることが多くて、「専門性がない」みたいなふうに言われることもありますが、でもそういう人たちの存在も、普段あんまり言われないけれど、すごく大事だなと思うのです。

書いていたら長くなってしまったのでこのへんにして

今回は、もはや家のプリンタもまともに機能していないので、赤入れをiPadでやってみました。わりと行ける気がします! ペーパーレスなのでSDGs的にも良い気がします。

 

 

もうすぐ校了ということで竹本氏が、紫洲書院が本拠を置く滋賀にある工房でテストプリントをしてきたそうなので、その様子を写真に撮って送ってもらいました。

 

紫洲書院公式Twitterより。ちなみにフォロワーはまだ34人みたいです^^

 

怪しい・・・!

こんな感じですが、できあがりはちゃんとしたソフトカバーの書籍になるようです。

実はすでに、紫洲書院のECサイト「ホンノカクレガ」で先行販売をしています。

https://www.shidzu-kakurega.com/items/42109328

また、これからAmazonや、東京のリアル書店でも随時買えるようになっていきます。Kindle版は、竹本氏のリソースパンパンにつき、もう少し後になるかと思います。

よかったらぜひ、上記のECサイトを見てみてください! それでは。

 

編集者、ライター。1986年生まれ。2010年からカルチャー誌「PLANETS」編集部、2018年からは株式会社LIGで広報・コンテンツ制作を担当、2021年からフリーランス。現在は「Tarzan」(マガジンハウス)をはじめ、雑誌、Webメディア、企業、NPO等で、ライティング・編集・PR企画に携わっています。
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