英米カルチャー大好きでも、日本人はどこまでいっても「異邦人」でしかありえない――NBA JAPAN GAMESから考えたこと

カルチャー

金曜日にNBA JAPAN GAMES ゴールデンステイト・ウォリアーズvs.ワシントン・ウィザーズの観戦に行ってきた。これはLIGメンのZIMAさん、たまさんに誘われて急遽行ったのだが、非常に勉強になった。

NBA JAPAN GAMESを観戦してみて

※国葬ではありません

まあいろいろ思うところはあったけど、「NBA好きな人、日本にこんなにたくさんいるんだ!」ということで。MLBは現地で見たことがあるが、NBAは初めて。僕は昔のNBAならちょっとわかるが、今はあんまりわからなかったので、ZIMAさんに色々教えてもらいながら見た。

試合後には、なぜか池袋で他のNBA大好きっ子たちと合流し、いろいろ話したのだが、それもめちゃめちゃ勉強になった。NBAオタクというのが世界に普通に存在し、こんなに熱い人たちなのだなと感銘を受けた。

英米カルチャー大好きの日本人(自分も含む)

僕はたぶん平均的な日本人に比べると、英米カルチャーがかなり好きな方だと思う。それが高じて、イギリスには2回、アメリカにはこれまで3回行った。

アメリカだと、ニューヨーク州(ニューヨーク)、コネチカット州(ニューヘブン)、フロリダ州(タンパ、オーランド)、テキサス州(ダラス、ヒューストン、オースティン、サンアントニオ)、ルイジアナ州(ニューオーリンズ)、カリフォルニア州(サンフランシスコ、サンノゼ)などに行った。イギリスだと、ロンドンとオックスフォード、グラストンベリー。

特にグラストンベリーに行ったのが衝撃的で、ここではフジロックの直接のモデルになったグラストンベリー・フェスティバルというロックフェスを毎年やっている。僕はフジロックやサマーソニック、ロック・イン・ジャパンなど、日本の主要フェスはけっこう行っているが、グラストンベリー・フェスティバルは観客の盛り上がり、楽しみ方のレベルが数段違うと感じた。決して、出羽守的な意味ではなく。

日本のロックフェスはおとなしいというか、そこまではっちゃけていないが、グラストンベリーでは、女性が肩車されてトップレスになってるわ、旗持ちみたいなのがいるわ、その旗で自分の洗濯物干してたりとか、いろいろムチャクチャである。

日本だと観客が受動的だが、グラストンベリーの場合は観客の楽しみ方が非常に主体的で、アーティストを崇めるような感じがぜんぜんない。「自分たちが主体」で楽しむ。これは歴史や文化の積み重ねがないとできないだろうなと思った。

そこにいる、英米文化が大好きでグラストンベリーまでわざわざ来ている自分のような日本人。どれだけ好きでも、異邦人でしかありえない、主体にはなれない。

たとえば、どれだけハリウッド映画が好きであったとしても、日本に生まれたらその時点でハリウッド映画の主役(や監督)になれる可能性は今のところゼロである。あくまでも受け手(消費者)であって、主体にはなれない。アジア人として生まれたら欧米の文化がどれだけ好きでもアウトサイダーなのだ。

こんなことを言うと、「『消費者』よりも『作り手』のほうがいい、というのは単純な認識だ!」というような批判を思いつく人がいるだろうが、僕が考えているのはそういうことではない。単純に可能性がゼロか、開かれているかということで、消費者であったとしても接し方がかなり変わるだろう。ある文化にとっての「異邦人」か、「その一員」か、ということだ。

逆に、日本人なら日本人なりに自分たちの歴史や文化を知っていて、そのハビトゥスを実践できるかというと、現代日本人は全然そんなことがない。別に伝統文化を身に付けているわけではなく英米の文化的な植民地のようなところもかなりあって、その意味で、アイデンティティの足元はぐらぐらだ。こういうことが、僕が思うところの、「戦後日本人の未完の課題」なのだ。

自分の連載「文化系のための野球入門」では日系人の話をしたが、それはそういう意味で書いている(第23回前編に掲載)。

ただ、こういった文脈で面白いのが、BTSと、映画『ワイルド・スピード』シリーズである。ここには、北米のアジア系移民と、本国の東アジアというざっくりとした認識がある。日本人からしたら韓国や中国は違う国なのだが、北米からしたら大して変わらないし、現地のアジア系移民もそういった認識である。こういう「東アジア」というざっくり認識。これは案外、ポテンシャルを秘めた概念でもあると思うのだ。

さて今日は1時間ぐらい家事もできたし、昨日までで活動してけっこう疲れているので、ゆっくりしようかな。ゆっくりしつつ、できたらインプットを進めて、インプットの計画も少しできたらよいかもしれない。

(了)

編集者、ライター。1986年生まれ。2010年からカルチャー誌「PLANETS」編集部、2018年からは株式会社LIGで広報・コンテンツ制作を担当、2021年からフリーランス。現在は「Tarzan」(マガジンハウス)をはじめ、雑誌、Webメディア、企業、NPO等で、ライティング・編集・PR企画に携わっています。
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