先日『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』を見てきた。現在ネット上では賛否両論で、そのことについても書きたいが、まずは今の『スター・ウォーズ』というシリーズをめぐる状況についてざっくりと自分の考えを書き留めておきたいと思う。『スター・ウォーズ』関連では書き溜めているメモが膨大にあるのだが、全部完成させるのはなかなか根気がいるので、時間を見つけてワントピックずつUPしていきます。
スター・ウォーズ「ブーム」と若年オタクの愛国主義
周知の通り、新シリーズ第1作となる『フォースの覚醒』は2年前に公開され大ヒットとなったが、社会現象化のプロセス自体がなかなか興味深いと感じた。
ひとつ象徴的なのは、『フォースの覚醒』が公開された2015年冬にちょうど『妖怪ウォッチ』の新作映画も公開されており、初週の動員数で『妖怪ウォッチ』の方が上回ったことがニュースになった、ということだ。で、2chなどを見ていると『妖怪ウォッチ』の「勝利」に賛辞を示す声がかなり見られた。
しかし、彼らは『スター・ウォーズ』そのものはもちろん、別に『妖怪ウォッチ』の大ファンというわけでもないように思えた。そこで喜ばれていたのは、「2010年代の日本発コンテンツである『妖怪ウォッチ』が、ディズニー傘下となってマスコミ的に盛り上がる『スター・ウォーズ』に勝利した」という日米代理戦争的/カウンターカルチャー的な図式だった。
これはなかなかの文脈の読み違えである。おそらく「語りの蓄積」があまりないことにより、現実に基づかない誤った現状認識が生まれてしまったのだと思う。ある程度の年代には当たり前の前提が、「語りの蓄積」がないことにより共有されていない。
まず、当然ながら『スター・ウォーズ』は、『ガンダム』をはじめとして日本のオタクコンテンツにかなり影響を与えている。それと、あまりにも自明なためあまり語られていないのは、『スター・ウォーズ』はとりわけ「ジャンプ」を中心とした少年漫画コンテンツの直接の影響源でもあるということだ。
今でこそ『スター・ウォーズ』はディズニー傘下となり、広告代理店的な仕掛けもあって「メジャー」なコンテンツのように思われているが、そもそもアメリカにおける『スター・ウォーズ』は、非常にオタク的な位置付けのものだ。
それはたとえば『ピープル VS ジョージ・ルーカス』という、『スター・ウォーズ』ファンと監督ルーカスの複雑な関係を描いたドキュメンタリー作品を観るとよくわかる。ほとんどガンダムファンと富野由悠季の関係と同じで、オリジネイター(この場合はジョージ・ルーカスと富野由悠季)が新作を公開すると、そのたびに「ファーストガンダムにあった良さが失われてしまった」というような文句を古参ファンが述べているわけだ。『ピープル VS ジョージ・ルーカス』に出てくるのは本当に多種多様なアメリカのスター・ウォーズオタクたちの姿であり、これは日本でコミケの最寄り駅に到着と同時にダッシュで駆け抜けるオタクたちの姿と何ら変わるところがない。
この映画は普通に90分とかあるのだが、予告編を見るだけでもなんとなく米国のスター・ウォーズオタクたちの感じが何となく掴めると思う。
で、年上のスター・ウォーズ・ファンの意見を聞いてると、アメリカのファンと自分たち日本のファンとをあまり区別して考えてはいない。わりとそこはボーダーレスなのだ。
ところが日本の若いオタクは、『スター・ウォーズ』ファンに対して「アメリカの俺ら」として共感を持つわけでもなく、ただ単に素朴なナショナリズムを発露し、かつディズニーと広告代理店の主導により「マスのお祭り」になってしまった『フォースの覚醒』に対してカウンター的意識をぶつけているだけになっている。
これはある意味、教養主義が機能していないということだと思う。以前このブログで教養主義についてDisっていた(「文化系マウンティングへの対策」)が、この「フォースの覚醒 vs 妖怪ウォッチ」事件で逆説的に明らかになったのはむしろ「もうちょっと教養主義ちゃんとやったほうがいいのでは?」ということだった。
しかし、自分より上の世代の論客たちはあえてそこには触れてはいない。この件に関してパイセンたちに対しては、「もうちょっとちゃんとマウンティングしてよジョー!」とDisりたいが、たぶんやらないので、アラサーで『スター・ウォーズ』も『ガンダム』もリアルタイムでない後追いファンの筆者がDisらねばならないと、使命感を抱いてしまった。
このエントリはただの全方位Disに終わってしまった。で、次回は、実際に『スター・ウォーズ』がどのようにして日本の少年漫画コンテンツに影響を与えているのか、そして『スター・ウォーズ』に似ているようで間違えてしまった作品『ドラゴンボール』を例に挙げて書いてみたいと思う。(続く)
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