巨人・坂本勇人の醜聞――スポーツマンとして凡事徹底(Back to Basics)の精神に立ち戻るべき

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巨人で長年、遊撃手レギュラーとして活躍してきた坂本勇人のスキャンダルが文春オンラインで大きく報じられた。

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まあ一言でいうと、おぞましい。要するに坂本勇人は、女性の好意を利用して、自分の思うようにその女性のことを扱い、責任を取ろうとしなかった、ということであるらしい。

もともと坂本勇人は、女性遊びが激しいことで知られ、メディアでも散々報じられてきたし、野球ファンもそのことはよく知っている。

だから今回の報道を受けて、ネットの野球ファンのあいだでは「知ってた」という声が多く上がっている。必ずしも「知ってた」からといって、擁護の声ばかりではないし、「知ってた」を盛んに繰り返すのはショックを受けている表われではないかとも思うが…。

それと、「こういう個人情報や個人間のトラブルを、週刊誌に売る女性側はどうなのか?」という、告発側を道徳的に批難する声も見られる。また、記事中の坂本が発したLINEの言葉を「パワーワード」としてネタ化して茶化す、という傾向もある。

文春オンラインの記事を読むかぎりでは、坂本は女性の好意を徹底的に利用し、自分の欲望を満たしているように見える。「個人間のトラブルだ」というのはそうなのかもしれないし、有名人ではなく一般人どうしあれば報道されないような問題が、野球選手だからということでことさらに面白おかしく報道され、プライバシーが侵害されているのではないかというのも、100%なくはない意見だと思うが……しかし、坂本勇人は「ダサい」とは思った。

相手の好意を利用して自分の欲望を満たすだけ満たして、相手に負担をかけて責任を取らず、相手を精神的にも肉体的にも傷つけるというのは、相手のことを人間として見ていない上に、とても卑怯な行為ではある。もっとも逆に普通に生きていて、そういったイーブンでない関係性をもとに相手を傷つける行いに、身に覚えのない人の方が少ないように思う。僕も正直、身に覚えはある。

坂本勇人は「やんちゃ」で知られてきた人間ではある。しかし、周りの大人がその行為をきちんと叱ってきたのか。反省を促してきたのか。ファンも含めて、「野球さえ上手ければ、何をしてもいい」というふうに、扱ってきてしまったのではないか。

プロ野球のスター選手などでなければ、そういった愚かな行いを反省する機会は往々にしてある…ように思う。だが坂本の場合、醜聞の報道はされるけれども、野球ファンも、野球評論家も、表立って批判したり、「反省すべき」という意見をほとんど発してこなかった。それは「あいつはやんちゃだから」と、「野球さえ上手ければOK」という、ふたつのロジックに支えられてきた。

日本はどうも、「スポーツ選手は高潔であるべき」というロジックへの支持が薄い社会になってしまっているようである。

ただ思うに、スポーツファンは勝敗だけでなく、その競技のなかでスポーツマンシップがどれぐらい発揮されているのかを見ている部分もあるように思う。僕が「文化系のための野球入門」で書いていることを応用するなら、スポーツマンシップ=武士道であり、坂本の行いはきわめて卑怯であるので、スポーツマンシップ=武士道に反する。

「スポーツと普段の社会生活は別物」というロジックもあるのだが、僕が思うに、「みる」「する」「ささえる」などさまざまなかたちでスポーツに関わる人たちのほとんどは、実は「スポーツマンシップを日常生活に応用する」ということをほとんど意識してやっていないのではないかと思う。意識してやっていなければ、当然、応用できるはずもない。

対人関係などの社会生活において、相手の好意を利用して自分の欲望を満たす、というのはスポーツマン的ではない。たしかに坂本勇人は、野球場では優れた選手だ。技術はもとより、リーダーシップやキャプテンシーもあるし、チームを鼓舞するようなプレーができる。だがそれは、男子ばかりのプロ野球チームというホモソーシャルな空間でだけでしか発揮されておらず、女性も含まれる一般の社会生活では、野球場で見せるプレーのようなことができていなかった。

その理由は「応用しようという発想や意識がなかった」からではないかと思うし、先輩やOBなどからもそのように指導されてこなかったからではないか。むしろそういった状況にこそ、野球界全体が抱える問題が見えるように思う。

坂本、女性の好意を利用して自分の欲望を満たすとか、相手をモノ扱いして、しかも責任逃れをし中絶を求めるなんていうのは、相手を精神的にも肉体的にも傷つけることであり、やってはいけないことだ。スポーツマンとして卑怯だし、恥ずかしいことだぞ、そんなことをしているやつは「カッコいい野球選手」では決してないぞ、と。これは僕個人の意見でもあるが、ファンからもOB・評論家からも、こういう声が全然出ないということが非常に問題だと思う。

野球場ではスポーツマンとしてカッコいいけど、私生活ではクズです――そんな野球選手は、本当にカッコいいのだろうか? こういう当たり前の問いが、問われるべきである。

早めに、ちゃんと自分の意見を書いた。野球文化は何周もしすぎて、こういう当たり前の意見がほとんど出てこなくなっている。しかしだからこそ、凡事徹底、Back to Basicsの精神は、意外と、きわめて重要だと思う。

……さて今日は、まだできていない原稿や企画書に一通り手を付ける、をこれからやっていこうと思う。多すぎる仕事は、まず全部手を付ける。ここも凡事徹底である……(うぅ)。

編集者、ライター。1986年生まれ。2010年からカルチャー誌「PLANETS」編集部、2018年からは株式会社LIGで広報・コンテンツ制作を担当、2021年からフリーランス。現在は「Tarzan」(マガジンハウス)をはじめ、雑誌、Webメディア、企業、NPO等で、ライティング・編集・PR企画に携わっています。
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