Webマーケティングの手法を用いたチーム共用ファーストミット購入プロジェクト

マーケティング

僕はEXODUS BASEBALL CLUB(エクソダス)という軟式野球クラブチームのゼネラルマネージャー(GM)兼 雑用 兼 会計係をしています。主な業務は、わりと女子マネに近いです。女子マネが試合にも出場しているイメージです。ちなみに実は、このにどね研究所で書いているライターのほとんどがExodusのメンバーだったりします。「現代の天狗倶楽部」を目指しているので。(天狗倶楽部とは何かを知りたい方がいましたら、ぜひWikipediaを参照してみてください)

さて、野球チームの運営では会計も非常に重要です。試合会場のグラウンド代、審判代、ボール代が主な用途ですが、チームとして備品を購入する場合もあります。

もし備品を購入したいと思ったとき、基本的にチーム運営はメンバーの会費で成り立っているため、丁寧なインナーコミュニケーションが欠かせません。

キャッチャー用具など最低限必要なものはすでにあるのですが……部の備品としてのファーストミットはこれまでありませんでした。そこで「ファーストミット購入資金を調達しよう!」というプロジェクトがスタートし、僕が謎に熱の籠もったメールをみんなに向けて書いたことで、このたび無事に購入することができました。

これは非常に小さな例ではあるのですが、Webマーケティング、そしてインナーコミュニケーションの例としてなかなか良いかなと思うのと、せっかく自分が書いた文章なのでここに転載しておきたいと思います。

前提

Exodusの場合、メーリングリストに入っている人は約60人、LINEグループに入っている人数は約40人で、比較的よく参加している人は20人ちょっと、という感じです。

今回は、理由は後述しますがコミュニケーション手段としてはメールを採用しました。

実際にメンバーに送ったメール

※人名は仮名にしてあります。

(件名)
【EXODUSカンパのお願い】突然ですが、部の共用ファーストミット購入をしたいと考えております。まずは、理由を説明させていただきます。

(本文)

こんにちは。EXODUS会計の中野です。
今回は突然ですが、皆様へのカンパのお願いに上がりました。
「部の共用ファーストミット購入をしたい!」と考えております。

▼なぜファーストミットが必要なの?
名手・K村一塁手が名古屋転勤中
(それでも来れるときに参加してくださっていますが)のため、
現在、チーム事情的にファーストが固定されておりません。
また、K村さん以外のファーストミット所持者としてN井監督がいますが、
中学時代から愛用している思い出の品のため、できれば共用には回したくない、
だけど監督である手前もあり自分から言い出せず、一人で思い詰めていたそうです。

しかし、ファーストを守る人が専門用具でない内野用・外野用グラブで守っていると、
チームの装備レベルとして弱みにつながってしまいます。

いわば、キャッチャーがマスクをつけずに試合に出ている状態だった、
と言っても過言ではありません(過言かもしれません)。
そのため、キャッチャー用具バッグに入れておく共用ファーストミットを購入し、
誰でも・いつでも気兼ねなくファーストを守れる環境づくりが必要だと判断しました。

▼そもそも部の共用ファーストミットってなかったの?
実は以前、部の共用ファーストミットが存在していたそうです。
しかし、いつの日からか忽然と姿を消してしまいました。
ここ数ヶ月間、行方を知っていそうな方への聞き取りを行うなど、
秘密裡に内偵を続けましたが、ついにホシの尻尾を掴むことができませんでした。

▼なぜカンパが必要なの? 部費でまかなえないの?
おかげさまで今年も部費が集まりつつあります。
皆様、誠にありがとうございます。
ですが……これは運営側の設計ミスなのか、
一昨年まで1万5千円だったものを昨年から1万円に値下げし、
安くしすぎた結果、現状の残金ではグラウンド代・審判代・ボール代でいっぱいいっぱいとなり、
1〜2万円もするファーストミット代などとても捻出できそうにない状況です。

しかし、ファーストミットは共用のものをチームとして装備しておきたい……!

というわけで、
【一人2,000円】のカンパをお願いできませんでしょうか……?
(もちろん、有志でかまいません!)

▼カンパの方法について
試合会場にて中野のほうからミーティング時に、
みなさまにお声がけさせていただきます。
よろしければその際に、2,000円をカンパいただけますと幸いです。
また、「説明に納得がいかない!」という場合は、
ぜひ中野に忌憚なきご意見をお伝えください。
真摯に受け止めさせていただきたいと考えております。

2019年10月1日より東京都では最低賃金が改訂され、1,013円となっています。
2,000円を稼ぐには、2時間も働かなければいけない計算になります。
2時間のつらい労働の果てに得られるお金ですので、
カンパいただける際には、その重みをしっかりと受け止めたいと考えております。

それでは、長くなりましたが、
皆様、何卒ご検討いただけますよう、
よろしくお願い申し上げます。

2021年4月20日
EXODUS会計 中野 慧

結果……コンバージョン率は?

前述のとおり、メール配信の最大分母が約60人のところ……結果、実際にカンパに応じてくれた人は12人でした。

60インプレッション(imp)で12コンバージョン(CV)、つまりCV率は驚異の20%ということになります。Webマーケ関係者であれば、いかにこの「CV率20%」という数字が驚異的かはおわかりいただけるかと思います。

カンパが2,000円×12人=24,000円で、ファーストミットの購入代金は2万円弱なので、無事にカンパは成功しました。「共用ファーストミットがない」というのは長年のチーム運営での懸案でしたので、一つのメールで課題が解決されたのはけっこう喜ばしいのです。なお、余剰資金は年間活動費(部費)にプールされることになります。

ちなみに、僕から試合会場でリマインドするまでもなく、みんなが自主的に「中野さん、カンパです!」と僕に声をかけてくれ、積極的に払ってくれました。「メール面白かったよ」という意見もけっこういただいておりました。

メールマーケは相手の姿が見えないですが、むしろLINEなどのリアクション可能なSNSツールよりも、意外と見てくれているというのはあるかなと思います。LINEは気軽さゆえに、あまりちゃんと見てくれないケースもあったりするのかなと。メールは一方通行のコミュニケーションなので、いい意味で「ひとり相撲」をしている滑稽な感じが出せるとよいなと考えました。

以前、LIG社のブログでも「俺はWebマーケティングもできるぜアピール」をしました(LIGで約3年働いて学んだこと・得たこと、PR・情報発信・問い合わせ獲得施策について。)。実際そこに書いたことを誇張せず、より明確に言ってしまうと、僕が主導してやったマーケティング施策は、大変失礼ながら他の人に比べてダントツの成果を挙げておりました。

Webマーケティング/インナーコミュニケーションで大事だと思うこと

こういったWebマーケティングやインナーコミュニケーションにおいて、自分が何を大切にしているかというと、一言でいうと「真面目に考える」ということなのです。なんだそんな当たり前のことを、と思われるかもしれません。

たとえば、こんなふうに「真面目に考え」ました。

まず、コミュニケーション手段ですが、普段の試合前後のミーティングなどでも、この種の話はできなくもないですが、突然ミーティングの場で「2000円カンパして」と言われると同調圧力が発生したりと、嫌な流れが生まれてしまう可能性もあります。それは本意ではありません。また、ミーティングに全員が揃うということは決してありません。

基本線として、お金を出すかどうかは、みんなそれぞれでじっくり考えてほしかったのです。そこでひと呼吸おいて主体的に考えてもらって、もし出してくれるなら出してくれたらありがたい、というふうにコミュニケーションをデザインするのが重要だと考え、かつ「運営側としてみんなの意見をちゃんと聞く用意もあります」というオープンな態度を見せることがメンバーのエンゲージメントを高める上でも重要だと考え、「メールで全体に連絡する」という手段をとることにしました。

さらにいえば、メールは保存や検索ができます。その場での全体向けの講話などと違って「残る」ということが非常に重要であり、それゆえに「テキスト情報としての誠実さ」も問われます。

実際、ある商品のLP(ランディングページ)を作る際には、「この文面で、情報として残っていって問題ないか」ということをしっかり精査します。LPの文面は、「消費者との約束」でもある、という意識がきわめて重要です。「情報として残す」というのは、口約束とは違うわけですからね。

また、メールの文面においても意図していたことがあります。「ファーストミット購入の資金を集めたい」というとき、真面目にその理由を説明することももちろん必要ですが、読んでいただく方から「メールを読んでいただく」時間を頂戴する以上、ただ単に真面目な内容だけでは心が動かないだろうな、と考えるわけです。だから、読者を楽しませる、サービス精神を発揮する、ユーモアを入れる、無駄と過剰さを入れる。これが大事かなと思っています。

上記のメールはふざけているところはけっこうありますが、これは「ふざけよう」と思ってふざけているわけではなく、みんなに笑ってもらえるかな? とか、傷ついたりする人いないかな、大丈夫かな? とか、そういうことをめっちゃ真面目に考えてはいるのです。結果として、「誰も傷つかないけどユーモアのある」文面にはなっているかと思います。

ちなみに急いで付け加えておきたいのですが、「ユーモアはすべからく誰も傷つけないものであるべし」とは、あんまり思いません。しかしWebマーケティングやインナーコミュニケーションという分野においては、その要素はわりと大事かな、とも思います。

あと、意外と大事だと思うのが「無駄を入れる」「過剰さを入れる」という点です。モノではなく〈情報〉というのは、物理的には非常に小さなデータ量でしかないので、モノに比べて人の心を動かすハードルはかなり高いです。そこで「コストパフォーマンス」とか「自分の人日単価」を気にして無駄を削ぎ落としたり、「最低限でいいや」という思考だと、何か施策をやったとしても、まったく人の心を動かすことはできないのかな、と思っていたりします。だからこそ、一見無駄に見えることに無意味に工数をかけていたほうがいい、という部分はあります。もっとも、楽しんで文面は作っているのですけど。

まとめ

この記事はなんで書いているかというと、要は「自分が書いた文章はなんらかのかたちで公開しておきたいな」と思ったからでした。Webマーケティング論、インナーコミュニケーション論については、僕はこれまでにけっこう成果は出せているので、自分のなかで「こうやるといい」という方法論みたいなものは、けっこうあったりします。

でもなんとなく、マーケティングの方法論を嬉々として語ってる人のことは、個人的にあんまり好きじゃなかったりします。それよりも大事なことって世の中にはいっぱいあるので、「目が¥マーク」になっている人には美学的になりたくないとも思ったりします。だから、Webマーケティング/コミュニケーションについて喋るというのは、あんまり世の中にシェアしたい内容ではないのです。みんなが「目が¥マーク」になっているから、世の中のダメさが残り続けるんだ、とも思いますし。

とはいえ今回は「自分が書いた文章を載っけておきたい」「EXODUSというチームのPRもしておこう」という要素が入れられたので、それについてもついでに書いてみました。それではまた!

中野 慧 (Kei Nakano)

1986年生、ライター・編集者・ディレクター。PLANETSにてWebマガジン編集、株式会社LIGで広報/メディア事業を経験したのち現在フリーランス。過去に構成・編集を担当した書籍に『「絶望の時代」の希望の恋愛学』(宮台真司編著、KADOKAWA/中経出版)、『ナショナリズムの現在』(小林よしのり他著、朝日新書)、『現役官僚の滞英日記』(橘宏樹著、PLANETS)、『若い読者のためのサブカルチャー論講義録』(宇野常寛著、朝日新聞出版)など。現在は、PLANETSにて月イチで「文化系のための野球入門」を連載中。
Twitter ⇒ @yutorination
Facebook ⇒ keinakano21

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