朝日新聞のWebマガジン「&M」にて、テロ/紛争解決活動家の永井陽右さんと哲学者・小川仁志さんの対談構成を担当しました。
「共感にあらがえ」連載について、ライターの視点から
この記事は、永井さんの連載「共感にあらがえ」のなかの企画で、各界の識者/専門家と「共感」をテーマに対談していくというものです。
ちなみに昨年11月末に公開された、はるかぜちゃんこと春名風花さんとの対話では、地味に「SNSの使い方」というような実用的な内容が書かています。地味に、いま話題(?)の演劇の効用についても触れられていて、興味深い内容になっているんじゃないかと思います。
春名:最近、演劇は複眼的な視点を持つためにすごくいいツールなのではないかと思っています。舞台は複数の人間が生の感情をあらわにしていて、様々な人の立場を感じ取ることができますし、たとえ共感できない登場人物がいても、その人の価値観や行動の背景を知れば、全体の見え方が少し変わります。
(中略)
永井:実は平和構築や紛争解決の現場でも演劇が取り入れられることもあるんですよ。みんなで登場人物を設定して、一人ひとりの立場を考え、劇を作り上げてお披露目する。問題に対するロールプレイングもできたりしますし、複雑な共同作業でもあるので相互理解や関係を深められたりもします。
こういった、教養ではあるけれども若干実用寄りの内容は、朝日新聞デジタルに載るような記事のなかではちょっと珍しいのかもしれません。
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今回の小川仁志さんの記事でも、少しそういった内容が出てきます。
たとえば、哲学者である小川さんは、市井の人たちと「哲学カフェ」という場で議論をするのだそうです。そのなかで、自説を押し付け合うのではなく「哲学」をみんなでするために、3つのルールを設けているのだそう。
1.難しい言葉を使わない
あまりに難しい言葉を使うと、相手を煙に巻いてしまうし、聞く側も頭に入ってこない。互いに誰もがわかる言葉を使うことを心がける2.全否定をしない
「あなたは完全に間違ってる」と言ってしまうと話が進まなくなってしまう。建設的な話し合いにするべく「あなたはここが違います」と具体的に指摘する3.人の話をよく聞く
自分の話ばかりしてしまうと、相手の話を聞かなくなる。自分の主張ではなく、「相手の意見を聞く」ということを目的にする
これは、仕事でのコミュニケーションにおいても、日常生活のコミュニケーションにおいても、気をつけていくと、議論やコミュニケーションの中身が、変わっていくのではないかと思うのです。
こうして書いてみると簡単なことのように思えますが、意外とけっこう難しい。自分のなかで、専門用語を噛み砕いてしっかり言語化しないといけない、という必要性に迫られていくんですね。
「再定義」という視点
対談をまとめていて、小川先生の「再定義」という視点は、とても魅力的だと感じています。
上で述べたように、哲学カフェの議論をふだんのコミュニケーションに応用すると、やはり専門用語は使わないようにしないといけません。誰にでもわかるように言葉を噛み砕くために、自分なりの視点と解釈で、ある現象をわかりやすく言語化しないといけません。
それがまさに「再定義」なのかなと思っています。
僕自身、批評としてものを書くときも、自分のなかの思考をしっかり噛み砕き、言語化する、「再定義する」というのを意識として持っていかなければ、自分なりに納得する言葉は書けないのではないか。そんなことを意識し始めたように思います。
それと、こうやって、やった仕事を言語化して振り返るのも大事なことかもしれません。今回はまあいろいろ内容面以前にご迷惑をかけたりしてしまったのですが、そのあたりは、自分がいま習慣化していることでなんとか改善していきたい。こうやって「ブログを書く」というのも、自分がどんどん仕事をせざるをえない状況に自然に持っていくための、工夫の一環です。
気負いすぎない範囲で、ちょこちょこと書いていきたいと思います。
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