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バンドマン的男性性 | にどね研究所

バンドマン的男性性

雑記

最近、プチ車生活を再開した。今住んでいるマンションから実家がすぐそばで、車を借りられるようになったためだ。世間的な目線から言えば「30代男性なら車ぐらい自分で買えよ」と思わなくもないが、使えるものを使うのは低成長時代への適応だとも思う。

車が使える状態で東名高速(最近は首都高も来た)の青葉インターの近くに住んでいるのはなかなか便利だ。都心、羽田、横浜みなとみらい、湘南などいろんな方面に下道なしで行けてしまう。東名を使えば二子玉川までは20分、渋谷まで30分、霞ヶ関は40分ほど。新幹線の止まる新横浜駅まで15分、横浜駅まで25分、羽田空港まで30分。もちろん高速料金はかかるが、人を迎えに行く程度ならかなり気軽にできる。逆に、家族に頼んで送ってもらうことも可能だ。

それで思い出したのが、東名高速には謎の空間圧縮能力があり、夜だと青葉インターから霞が関まで30分ほどで着いてしまうことである。20代の無職だった時期、キャリア官僚の女子と付き合っており、彼女の仕事終わりや飲み会終わりに車で霞ヶ関や赤坂に迎えに行ったりしていた。自分は仕事していないで、実家でぶらぶらしていた。

サニーデイ・サービスの曽我部恵一の歌詞世界にはこういう男子プータロー、女子限界OLの組み合わせが出てくる。

古典的にはヒモと言われるものだが、カッコよく言えばバンドマン的生活とも言える。ちなみにここで言うバンドマンという言葉のなかには、役者、物書き、お笑い芸人、料理人なども含めている。

ここ数年のTwitter上では、「デートは割り勘か、男が多めに出すか?」という議論が盛んなのを目にする。しかし自分の20代の頃の記憶としては、女子が働いていてお金があるから出す、みたいなことは、自分にも周囲にも普通にあったように思う。「割り勘」or「男が多めに出す」の二択ではない世界が広く存在したのだ。

バンドマン的な男性がなぜモテることが可能なのかというと、金がないからいわゆる有害な男性性が少なく(「誰が金出してるんだ!」みたいなことを(言おうが言うまいが)醸し出すことがない)、中性的だからではないかと思う。世間にはバンドマン的男性をアルコール依存やDVなどと結びつけるイメージがあるが、自分の知っている範囲ではそこまで極端な人は少数であり、ずっと夢を追っているわけでもなく、その分野で少しずつ実績を積み重ねる者もいるし、あるいは一旦諦めてカタギの仕事に打ち込んだり、またヒモ的生活に舞い戻ったりもする。

バンドマン的男性はSNS上にはあまり受肉しないが、小説や映画、ドラマなどには存在する。『火花』『だが、情熱はある』『花束みたいな恋をした』のような作品がそうだ。Twitterに出てくる一般男性は、イキっているビジネスマンや、ハイスペ男子、荒んだ言葉を吐く文化人などのような人たちが多い。世界がネオリベ化していると思う。現実にはバンドマン的男性もそれなりに多いし、彼らがダメ人間であり、それを養う女性は現実感覚がないというのは、すべてを「スペック」で数値化しようという現代社会の闇ではないだろうか?

お知らせ

オピニオン的なことを投げっぱなした後ですが、一応お知らせも置いておきます。

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編集者、ライター。1986年生まれ。2010年からカルチャー誌「PLANETS」編集部、2018年からは株式会社LIGで広報・コンテンツ制作を担当、2021年からフリーランス。現在は「Tarzan」(マガジンハウス)をはじめ、雑誌、Webメディア、企業、NPO等で、ライティング・編集・PR企画に携わっています。
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