年末年始はインフルエンザにかかったりして、ブログの続きを書く時間がなかなか取れませんでした。やはりインフルはちゃんと予防接種しておいたほうがいいです……。
さて前回のエントリ(2010年代のスター・ウォーズ「ブーム」を考える(1)内閉化するオタク文化)では、「そもそもスター・ウォーズは広告代理店的なウェーイ的文化ではなく、オタク的な文化だった」という(ある種、当たり前の)話を書いたのだが、ここからは『スター・ウォーズ』というコンテンツと日本のアニメ、少年漫画との接点について書いてみたいと思います。
スター・ウォーズVSガンダムという対立図式
▲『機動戦士Zガンダム』Blu-ray Box Part.1(画像はAmazonより)
『スター・ウォーズ』といえば、日本の漫画・アニメでは『機動戦士ガンダム』と比較して語られることが多い。『スター・ウォーズ』の最初の作品『エピソード4 新たなる希望』は1977年公開で、そのフォロワーとして登場したのが、1979年にテレビ放映が開始された『機動戦士ガンダム』だった。
『スター・ウォーズ』と『ガンダム』の日本国内における受容史はやや複雑である。そもそも日本の男性の「オタク」の起源は1960年前後生まれの「新人類世代」であると言われている。新人類世代の人々は当初は今のように「サブカル」や「オタク」などの区別がなく様々なジャンルのコンテンツを雑多に消費していた。で、さらに複雑なのが、新人類世代の「オタク」的なものの原型のひとつとして、それ以前からいる「SF好き」の人々の存在も重要である。
で、そのプレ新人類世代〜新人類世代ぐらいまでの人々には創作物の趣味に関して「国内/国外」とかそういう区別があまりなかったが、『ガンダム』の登場以降は「国内/国外」という区別がしだいに明瞭になっていったようなのだ。
70年代前半生まれの「団塊ジュニア世代」はまさに『ガンダム』の直撃世代で、その下の「ポスト団塊ジュニア世代」になると、より国内のコンテンツへの関心が高まっていって、さらに80年代生まれ以降のオタク(『エヴァンゲリオン』以降、ということになると思う)になると、「外国のコンテンツにも区別なく接していた新人類世代」の感覚がほぼわからなくなっている。なので、前回書いたような「若年世代の文脈の読み違え」は起こるべくして起こったことだと思われる。
で、いきなり現代に話を戻すと、今回の『最後のジェダイ』を鑑賞した人々から「スター・ウォーズはガンダムを見習うべきでは?」というような意見も出ていた。これは僕も、一部はそのとおりだとは思う。『スター・ウォーズ』が善悪の対立という単純な図式に頼り続けている一方で、『ガンダム』はファーストガンダムこそ第二次大戦的な総力戦の二項対立図式だったが、2作目の『機動戦士Zガンダム』(1985年)では内戦を、そして『Zガンダム』後半〜『ガンダムZZ』(1986年)では三つ巴戦を、『Vガンダム』(1993年)以降はゲリラ戦を含む非対称戦争と、より複雑なテーマに取り組み続けている。それらに比べると、90年代末以降に作られた『スター・ウォーズ』続編群(EP1〜3、7=フォースの覚醒、8=最後のジェダイ)でやっていることはかなりシンプルに感じられてしまうのだ。
※ちなみに、『Zガンダム』を観る際には、(たぶん)宇野さんが昔書いていたと思われる『機動戦士Zガンダム回顧録』に各話解説があって、これをサブテキストにして観ると、より面白く鑑賞できると思う。→機動戦士Zガンダム回顧録
あと『A New Translation』という10年前に作られた劇場版もあるが、TVシリーズを先に観たほうがいいです。劇場版はダイジェストで、TVシリーズよりももっとわかりにくいし、ラストがまったく違うので。
▲『機動戦士Zガンダム』は現在、Amazonプライムで全話観れるようです。
……なのだが、このあたりの「『Zガンダム』のほうがすごい」という受け止め方は、「『日本すごい』を言いたい」という安易なナショナリズムに簡単に集約される言説だし、実際にそうなっている。僕からすると「Zガンダムのほうがすごい」というのはそりゃそうだというか、「1+1=2だ!」ということを声高に主張しているだけというか、批評的な価値がゼロな感想だと思うのだ。
『ガンダム』が『スター・ウォーズ』よりも優れているのは、単純に言えば戦争の対立図式の設定の仕方だと思う。ガンダムは総力戦→内戦→三つ巴戦→非対称戦争という展開を辿ったわけだが、『スター・ウォーズ』は今回のEP7、EP8でようやく「内戦」の段階に到達しただけ。もしかしたら今後のEP9では三つ巴の図式になるのかもしれない。そうなるといよいよ『スター・ウォーズ』は『ガンダム』の後追いをしているだけということになる。
だが僕は、『スター・ウォーズ』の面白さは、『ガンダム』と対比するとむしろ見えにくくなってしまうと思う。「戦争の対立図式の設定」ではたしかに『ガンダム』のほうが優れている。しかしむしろ『ガンダム』にはない描写のほうに注目したほうがいいと思うし、現代の国内のコンテンツから失われてしまった要素も見えてくるように思う。
そこで、『ガンダム』ではなく『ドラゴンボール』と『スター・ウォーズ』を比較して考えてみたい。……という感じで、本題にようやく入れるのだが、続きはまたあとで更新します。(了)
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