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横浜DeNAの下克上とクライマックスシリーズのゲームシステムを振り返ってみる | にどね研究所

横浜DeNAの下克上とクライマックスシリーズのゲームシステムを振り返ってみる

カルチャー

横浜DeNAベイスターズがセ・リーグ クライマックスシリーズ(CS) ファイナルステージで広島東洋カープに対し4勝目を挙げ、19年ぶりの日本シリーズ進出を決めた。10/29(日)現在は日本シリーズ(対福岡ソフトバンクホークス)を戦っている。

今回、レギュラーシーズン3位の横浜が独走優勝した広島にCSで勝ってしまったため、CSの在り方について議論が紛糾している。すでに日本シリーズが始まってしまったのでタイミングを逸した感があるが、そのことについて今一度まとめて書いておきたい。

「野球ファン」のなかの温度差が問題だ

横浜がCS勝利を決めた翌日、朝日新聞で「広島のCS敗退、ペナント独走優勝の価値考える機会に」という記事が出て、炎じょ……大変話題になった。これがひとつの代表的な例であると思われる。

現在のクライマックスシリーズは2007年シーズンからセパ両リーグで正式導入されたもので、レギュラーシーズン3位と2位がまず戦い、勝ったほうが1位と日本シリーズ進出を賭けて戦う形式である。「1リーグあたり、6チーム中3位まで出られる(参加率50%)」というのは果たして日本一を決める方法としてどうなの、ということは当初から疑問の声が出ていた。

ただ実際にやってみたところ、優勝だけでなく2位、3位争いが重要になるのでシーズンの終盤までレギュラーシーズンが盛り上がるようになり、観客動員も右肩上がりとなった。多くのプロ野球ファンにとっては、「ゲームシステムとしてはおかしいが、試合が面白くなったのでそこには目をつぶる」というのが一般的な受け止め方になっていたと思う。

今回問題となっているのは、「広島は独走優勝したのに、3位の横浜が日本シリーズに出るのはおかしい」という1点につきるのだが、まずは少しこれまでの経緯を確認しておきたい。

そもそも現在のクライマックスシリーズの原型となったのは、パ・リーグが人気低迷の打開策として導入したプレーオフ制度だった。現在と同じく、2・3位の勝者と1位が戦う形式だが、アドバンテージの付け方やリーグ優勝の扱いなどには細かな違いがあった。

そして2004年以降、2005年、2006年と続けて開催されると好評となり、折からのプロ野球再編問題(2004年〜)とも併せて改革議論が高まるなかでセ・リーグでも導入が決定され、「クライマックスシリーズ」というセパ統一の名称で開催されるようになったのが2007年からである。現在のCSの方式は、2004-2006年にパ・リーグが試行錯誤し、2007年に初めてセパ共催となったことを経て、2008年になって(パ・リーグが自らの経験を踏まえて1位チームの1勝アドバンテージ制などを提言し)ようやく定着したものだ。今の制度に固まって今年で10年目ということになる。

ではCSの制度が固まって10年で、レギュラーシーズン1位のチームがCSを勝ち抜いた割合はどれぐらいなのだろうか。まとめてみると、以下のようになる。

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レギュラーシーズン1位のCS通過率はセパ併せて85%となる。この数字をみると、「ゲームデザインとしてはそれほど悪くない」という評価になるのではないだろうか。CSの存在意義は「レギュラーシーズン敗者も低確率で逆転可能」というものであるとすると、2位or3位で勝ち上がってきたチームの通過率がわずか15%になっているというのは、1位のアドバンテージとしては悪くなく、ゲームシステムとしてはよくできていると言える。

歴史を振り返ってみると、レギュラーシーズン3位のチームが日本シリーズに進出したのは今回を除くと2005年のロッテのみである。このときロッテは日本シリーズで阪神に4戦全勝、しかも1〜3戦までは10点を挙げ阪神を1点以下に抑え圧勝した(この歴史的な阪神の大敗は、4戦合計スコアからとってネットでは「33-4」と言われている)。このときはあまりにもロッテが強かったこと、対象がパ・リーグのチームであったこともあって、「3位が日本シリーズに出るのはおかしいのではないか」という声が大きくなることはなかった。

逆に今回は、一般的にも人気・注目度が高い広島だからこそ、このような騒動になっているのではないだろうか。そもそもプレーオフ時代〜CS時代にかけてレギュラーシーズン1位になったのに何度も敗れているソフトバンク(旧ダイエー)、そして前述のように「3位から日本一」となったロッテのような例がある。プレーオフ時代から試行錯誤し、(あくまで確率の上では)不公平感の少ないゲームシステムを作り上げ、ファンのあいだでのコンセンサスを取ってきたのはパ・リーグの側だった。「逆転劇も含めCSの醍醐味である」という共通了解は「(セパ関係なく注目する)プロ野球ファン」の間にはできていたはずだった。

にも関わらず、このタイミングでCSのゲームシステム問題がメディアで蒸し返されていること自体は、日本メディアのパ・リーグ軽視、セ・リーグ重視といういびつな構造や、パ・リーグの作った比較的優秀なシステムであるクライマックスシリーズへの、セ・リーグの「タダ乗り」が露呈してしまった、ということではないか。

この件に関して筆者は、まずひとつは「練度」の問題であると思う。パ・リーグのファンの多くは、筆者がここまで書いてきたようなことは百も承知であり、「自分の贔屓のチームは応援するけどプロ野球全体のファンでもある」という意識を作り上げてきた。一方でセ・リーグのチームのファンはどうだろう。自分のチームの結果に一喜一憂し、「プロ野球はこれまでどうあったのか、未来はどうなるべきか」ということに対する(Jリーグでいうところの)「サポーター」としての意識がまだまだ低いのではないかと思う。

クライマックスシリーズのゲームシステムを改善するたったひとつの方法

ちなみに筆者自身は、今のCSのゲームシステムは現状を踏まえれば最適解に近いと思っているが、もっともよい解決策はひとつであると思う。

それは、「球団を増やす」ということ。

そもそも6チーム×2リーグでプレーオフをやるということ自体に無理がある。現状のシステムでは、プレーオフをやるにはリーグが少ないし、1リーグあたりのチーム数も多すぎるのだ。

たとえばMLBでは5チーム×6地区に分かれ、地区優勝6チーム+ワイルドカード4チーム(アメリカン・リーグ、ナショナル・リーグそれぞれで勝率上位2チームずつ)の合計10チームでポストシーズンが行われる。MLBはポストシーズンの試合数が多く期間も長いため、それを勝ち抜いたことにはレギュラーシーズンとは独立した価値が認められるのだ。

「リーグは6チームで組まなければいけないもの」と思い込んでいるのは、世界中見渡しても日本のプロ野球と大学野球の世界だけだ。しかもそれは戦前に大衆人気のあった「東京六大学」というものの名残り、盲腸のようなもの。現在も東京六大学以外にも、東都、首都、関西学生などの主要大学リーグはわざわざ6チームでリーグ編成しているが、伝統に盲従し思考停止するのは、旧態依然としていること自体に開き直る学生野球だけで十分である。

「ポストシーズンのために球団増やすの?」と思われるかもしれないが、現在の日本ではNPB12球団以外にも独立リーグのプロ野球チームがどんどん増えていて、「NPB参加チームを持ちたい」という意欲は、現時点でNPB球団のない都道府県ではどんどん高まっている。ナベツネ亡き後、神速で着手すべきだろう。

たとえば4球団増やして16球団にして、4チーム×東西2地区×セパ2リーグに分け、地区優勝チーム+ワイルドカード(勝率1位)でのポストシーズンゲームを、現行のCSのゲームシステムを採用しつつ導入するといった選択肢も考えられる。16球団中6チームしか出られない、出場チーム率は37.5%になるので、ある程度の特別感も演出することができる。

(例)
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個人的には、ワイルドカードをリーグ当たり2チームにして1戦勝負のサドンデスゲームを行い、負けたほうが1勝アドバンテージありの地区優勝チーム(リーグ勝率1位)との対戦、勝った方はアドバンテージなしの地区優勝チーム(リーグ勝率2位)との対戦に持っていくなどすると、今回の広島の件でも取り沙汰された1位チームの試合勘問題(2位・3位が激闘しているあいだ1位チームは試合を行わず待機しているため緊張感が途切れる/2位・3位の勝者は激闘をくぐり抜けて集中した状態で1位との決戦に臨める)も解決されるのではないかと思う。また、ポストシーズン全体の試合数が多くなることで、ポストシーズンゲーム自体の、レギュラーシーズンから独立した価値も増すはずだ。そうなると、地区優勝チームの優勝の価値も、相対的に高めることができる。

……というように、チーム数やリーグの組み方レベルで再考すれば、さらにクライマックスシリーズを面白くすることも可能である。

まとめると、現状のNPB12球団ベースで考えるのではなく、NPB外のニーズなども踏まえて改革論議を進めていくのがよいと思うのだが、どうでしょうか。

(おわり)

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