今の都市部ではランニングやヨガ、ボルダリングなど気軽にできるスポーツの人気が高まっている。現代の労働者・学生はデスクワーカーが多く運動不足になりがちで、「運動を生活のなかに取り入れてみよう」という人が多くなっていると思う。
しかし、とりあえずよくわからないまま5km走るとか、苦行のような運動を行い、疲れていやになってやめてしまい、もとの運動不足な生活に戻る、というパターンも多いようである。
僕は昔からスポーツは苦手だが好きということもあり、今でもいろいろやっているが、運動が続かない人というのは基礎的な知識がない場合が多いと感じる。そこで今回は運動の基礎知識について色々書いておきたい。
とはいえ、僕もたとえば学生時代に入っていた野球部で何か知識を習ったとかそういうことは全然なく、今回ここで書くのは、学生スポーツから離れて以降に自分で勉強したり実験したり、他の人から教えてもらったりして得た知識である。
「運動神経が悪い」「歳を取った」のではなく、知識不足が大きな原因では……
たとえば僕は草野球チームを運営したり、他のチームに参加したりしているが、新しく入った人とかは思ったよりも動けない人が多い。はっきり言って年齢は関係なく、20代でも動けない人のほうが多いし、逆に40代だけどバンバン動ける人もいる人も目にしてきた。
あまり動けない人はみな、「いや、もともと運動得意じゃないから……」と言うが、僕のように普通に動ける人だってもともと運動が得意だったわけではないので、正直「基本的な知識がない」というのが動けない原因のうち80%以上を占めるのではないかなと思う。
身体に関する知識は必要なもののはずなのに、学校で習うわけでもないし、スポーツ系部活に入っていれば教えてくれるというものでもない。スポーツ系部活での運動経験があっても、これから述べる基本的知識をちゃんと知っている人はけっこう少ない。
↑ここで書いてる話とはあんまり関係ないが、スポーツ系部活の問題点についてはこの本がよくまとまっている。以前筆者が、著者の中澤篤史先生にインタビューした記事はこちら(全3回、3万字と大ボリューム。途中から有料ですみません)
静的疲労と動的疲労、積極的休養と消極的休養の違いを理解しよう
多くの人は「デスクワークばかりで運動不足になってるから、もっと運動したほうが健康にいいしダイエットにもなるよね」という動機でランニングとかジム通いとかを始めたりするわけだが、そもそも「デスクワークで溜まる疲れとは何か」を理解しておく必要がある。
人間が感じる疲労には「動的疲労」「静的疲労」の二種類がある。動的疲労とはスポーツをしたり歩きまわったり、「動く」ことで蓄積する疲労のこと。一方、静的疲労とは、椅子に座って机の上で作業をするなど、「じっとしている」ことで蓄積する疲労のことを指す。そして現代のデスクワーカーの身体的な疲れの多くは、この「静的疲労」であることが多い。
疲労を感じたら休養を取らなければない(当たり前定期)。
そして休養のなかにも「消極的休養(Passive Rest)」「積極的休養(Active Rest)」の2種類がある。消極的休養とは、簡単にいえば睡眠を取ったり家でゴロゴロしたりすること。多くの人は平日の仕事や勉強で疲れてしまい、土日の朝は遅くまで寝ることも多いが、これは消極的休養にあたる。しかし静的疲労を取り除くためには、消極的休養だけでは不十分で、積極的休養も実行する必要がある。
では積極的休養とは何か?
「ウォーキングやストレッチなど軽い運動をして身体を動かし、血流をよくしたり、循環器系を活発化させたりする行為」のことである。ものすごい距離を走ったりジムでハードワークしたりして身体を追い込むとか、そういうことではない。
平日に溜まった「静的疲労」を取るには、積極的休養と消極的休養の合わせ技が良い。
たとえば土曜の朝は午前中にいつもどおりの時間に起きて軽く家の周りを太陽光を浴びながらウォーキングしたり、ヨガをやったりして、お昼からゆっくり映画を観るとか、そういう過ごし方ができると理想的なわけである(ランニングやヨガの注意点についてはのちほど述べる)。まあ、それがなかなか難しいのだが、実行できたときの気分はとても良いので試してみてほしいところ。
運動は「ベビーステップで始める」
というわけで単に健康的な生活をするということになると、ハードな運動よりも、ウォーキングやストレッチなどで十分だとも言える。身体もよく動くし、これらをやっていれば精神的にも爽やかな気分で過ごすことができる。
ちなみに今回のエントリでは、あまり強度の高い運動は扱わない。僕自身は激しい運動はけっこうするのだが、他の人の話を聞いていると、運動をなかなか習慣化できない人が多いように思うためだ。「最近ランニングをしてるんだ」という人にかぎって、距離を聞くと5kmとか走っている。5kmをゆっくり走るのには40〜50分程度はかかるし、運動が習慣化していない人が始める(または再開する)運動の強度としては高すぎると思う。
ジムに入会して筋トレをするのも同じ。まず近くのジムを探し、入会して、トレーナーにいろいろ教わる。日常的に「今日はジムに行こう!」と決意してジムに行き「さあ、筋トレをやるぞ!」とまた決意する……たくさんの「決断」を日常的にしなければいけない。
しかし、日々決断をするというのは非常に疲れる。この調子では運動が習慣化されることはかなりハードルが高いものになってしまう。
理想的なのは、「歯を磨かないで寝ると気持ち悪い」ぐらいに運動を習慣化してしまうこと。そのためには、歯を磨くくらい軽い気持ちで始められるものでだんだん慣らしていくことが必要になる(続くならいいと思うし、ジムトレはけっこうおすすめではある。そのことについては前にちょっと書いた)。
とにかく、運動を習慣化するには「グッとハードルを下げる」、つまり「ベビーステップで始める」ということが必要なのだ。
静的ストレッチと動的ストレッチ
じゃあ、ハードルの低い運動ってどんなものがあるの? ということになるが、まずはすでに述べたウォーキング、特に朝の散歩が良い。ウォーキングが習慣化すると、自律神経も整えられるし、血行がよくなるし、長い距離を歩くために必要な最低限の骨や腱や筋肉の強さが手に入る。若い人であれば「ウォーキングなんて恥ずかしい」と思う人もいるかもしれないが、他人の目を気にするよりも、「ベビーステップで続けられる」ということが重要である。
それともうひとつ重要なのが、やはりストレッチである。実はストレッチにも「静的ストレッチ」「動的ストレッチ」という2種類がある。
「静的ストレッチ」は前屈や開脚など、ゆっくり身体を伸ばすも。「動的ストレッチ」とは、屈伸やラジオ体操のように身体を動かしたり回したりするもの。ちなみに、ラジオ体操は動的ストレッチとしてはなかなかよくできているらしい。
効果にも違いがある。動的ストレッチは運動前のウォーミングアップ、静的ストレッチは運動後のクールダウンに最適とされている。
個人的には、身につける順番としては静的ストレッチ→動的ストレッチがよいと思う。理由は後で述べますので、まずは静的ストレッチについて少し多めに解説してみたい。
静的ストレッチはヨガがおすすめ
静的ストレッチは開脚などが代表的だが、おすすめはヨガ。ヨガといえば女性向けのアクティビティというイメージがあるが、僕自身ちょっとした出来心でやってみたところ、これはなかなか面白いし気持ちいいと感じた。ヨガといえばヨガ教室とかに通わなければいけないと思われがちだが、本で勉強するのでも十分。僕は本を読んだだけで、ヨガ教室にはまだ行ったことがなく、それで不満は感じていない。ヨガ教室行くより本のほうが安いし。
どの本で勉強したかというと、これ。『深堀真由美の基本のヨガ入門』。
DVDつき 深堀真由美の基本のヨガ入門―カラダもココロもリラックス。 (主婦の友αブックス) 大型本 – 2010/3/31 深堀 真由美 (著)
で、なんで面白いと思ったかというと、まずポーズが全部中二病的であり、極めていけば最終的に邪王炎殺黒龍波とか出るようになりそうな気がする。あと、よくわからないけどフォースに覚醒しそうなスピリチュアルな何かを感じさせもする。まあこれはやってみないとわからない。『基本のヨガ入門』に載っているポーズのなかでオススメは「鳩のポーズ」「猫のポーズ」「牛面のポーズ」「鋤のポーズ」「肩逆立ち」などである。
ヨガは普通のストレッチに比べ、いろいろ体を入り組ませて固定させなければいけないので、パズルみたいでゲーム性も高い。これもヨガが一部の人達のあいだで人気を集める理由なのだと思う。
ちなみに、男性がヨガに拒否反応を示す理由として、前述の「スピリチュアルっぽい」感じに加えて、「こんな体柔らかくなるわけないよ」と思ってしまうのが大きいのではないかと思う。
最初は僕もそう思っていた。
しかも僕は生まれつき滅茶苦茶体が固い。でも、4〜5日連続してやっていたら「鳩のポーズ」「牛面のポーズ」とかのヨガの定番ポーズもだんだんできるようになってくる。ちなみにヨガをやるにはヨガマットがあったほうがいいので、Amazonとかで検索して買っとくのがおすすめ。下にリンク付けたやつが一番売れてるやつだが、1000円台で買える。
いま注目を集めている「動的ストレッチ」
で、次は動的ストレッチである。これは今一番熱いと言っても過言ではないエクササイズ。ヨガは前から人気があるし、ヨガの延長線上のピラティス(体幹トレ)はベストセラーとなった『長友佑都体幹トレーニング20』が50万部超えの大ヒット、ウエイトトレーニングは謎のマッチョ社長Testosterone(最初の本『筋トレが最強のソリューションである』は10万部を超えたそうです)の影響で微妙にブームになりつつある。で、その次と目されるのが「動的ストレッチ」なのだ。まあ、ブームに乗りゃいい、とか、すぐ「Tarzan」に影響されて、とかそういうのはあんまりよくないが、でも動的ストレッチにはいろいろ革命的なところがある。
というのも、ヨガだけやっているだけでは、おそらく他のもうちょっとハードな(というよりも、ゲーム性が高くて楽しい)スポーツをやってみようという気にはならないのではないかと思う。
しかし動的ストレッチをやると、身体の関節可動域が広がる。そうすると、より自分の身体をうまく操れるようになるし、怪我防止にも非常に効果的なので、より高強度のスポーツに踏み出していけたりもするのではないかと思う。運動を始めてはりきっていたら怪我をしてしまい、それでまた運動が嫌いになるという負のループも避けることができるはずだ。
動的ストレッチについては、これまであまりちゃんとした本が出ていなかったのだが、箱根駅伝三連覇中の青学陸上部のフィジカルトレーナーである中野ジェームズ修一氏が、その名も『動的ストレッチ』という本を出したので、僕はこの本で勉強してみた。
カラダの反応が劇的に変わる! DVD動的ストレッチ 単行本(ソフトカバー) – 2017/1/8 中野ジェームズ修一 (監修), 佐藤基之 (監修)
ヨガにしても動的ストレッチにしても、「ネットで検索してNAVERまとめとか見ればいいやん」と思われるかもしれないが、正直、現段階でネットで得られる情報は玉石混交で、間違った情報もけっこう出ている。そのうち無料でいろいろ正しい情報が手に入るようになるかもしれないが、今のところは本で勉強したほうがトータルのコストパフォーマンスは高いと思う。
というわけで今回は「積極的休養」「動的ストレッチ」について解説してみた。次にこの種のブログを書くときは、効果的なダイエットのしくみや必要なモノなどについて書いてみたいと思います。
(おわり)
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