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立憲・小川淳也を追った政治ドキュメンタリー第2弾『香川1区』ざっくり感想 | にどね研究所

立憲・小川淳也を追った政治ドキュメンタリー第2弾『香川1区』ざっくり感想

映画

煮詰まってきたので思い立って『香川1区』を観てきた。新大久保エリアに住んでいるので、ポレポレ東中野までは自転車で15分ぐらいで行けるのである。

前作の『なぜ君は総理大臣になれないのか』については前にブログで書いといた。

無党派層の市民として『なぜ君は総理大臣になれないのか』を観て思ったこと

ここでは要するに、旧来型の自民党政治やテレビマスコミが「国民=バカ」という前提のもとに行動していることに比べ、小川淳也の政治姿勢は真逆なので際立って見える、日本の議会制民主主義を前に進める上で(あるいはメディアの情報発信と民衆のコミュニケーションを考える上で)彼のような存在はキーポイントになる、そしてEBPMというあるべき政治コミュニケーションの可能性も示されている、というようなことを書いた。

『香川1区』ざっくり感想

結論から言えば、1作目ほどは面白くは感じなかった。

映画の効果はたしかにあったのだろう。小川をはじめ出てくる人々、小川陣営、家族も含め、その効果を踏まえて行動しているように見えて、ややドキュメンタリー色、生々しさが薄まっていた。

余計なことだが(大事なことかもしれないが)、次女がかわいいと思った。いや、長女もかわいい。両方好き。選挙活動でも頑張っていたし、ピュアな思いが通じた勝利の報を事務所で聞いたシーンには普通に感情移入してしまった。

ドキュメンタリー性ということで言うと唯一、田崎史郎が出てくるあのシーン。あそこだけは「カメラが捉えちゃった」という感じがあった。同時にあのシーンで、政治家としての小川淳也の明確な限界も感じた。とにかく「かたくな」なのである。直情径行であり、「もっと融通無碍になれ」と周囲の政治家たちから散々言われてきている理由がよくわかった。

そして一瞬映る辻元清美の存在感。僕は自民党支持でも立憲民主党支持でも共産党支持でもないが、辻元はやはり日本政治の宝であるなとあの一瞬だけで再認識させられた。だが今回の選挙では落選してしまった。大阪維新の会は、明らかに以前の辻元の政治手法をパクってここまで大きくなったと思うが、当のオリジネイターである辻元が維新に敗れたのは、辻元がアップデートできていないせいだろう。維新はアップデートを繰り返している。

小川淳也の話に戻ると、なぜ野党共闘が必要なのか、何のためにそれをやるのか、その部分がそれこそ政策として曖昧な気がした。自民党ではなぜ駄目なのか、なぜ政権交代が必要で、なぜ立憲民主が政権を担当しなければいけないのか。そこがわからなかった。

今回は香川1区の小川淳也の対立候補である平井卓也陣営のこともかなり描かれるので、そこは面白い。だが、それだけである。「あー、地方の自民党ってこんな感じで選挙戦やってるのね」というのは正直予想の範囲を出ないものだった。いろいろスレスレの泥臭いことをやっている。だがそれによってサイレントマジョリティの民意を吸い上げているという部分もある。そこには綺麗事も汚いこともないと思う。

結局のところ、映画だけでは政策の話と、自民党との対立軸がいまいち見えてこなかった。現実の選挙戦と同じである。そこはがっかりポイントではある。大島監督自身が、『なぜ君』の成功で少し冷静さを失っているのではと感じた。今回は選挙戦がメインなのはわかるけれど、もう少し政策や国民の政治に対する向き合い方のなにかヒントになるようなものであってもよかったのではと思ったのだ。

平井卓也が「あんなのが通用するなら、みんな政治家が映画つくるようになりますよ」と言っていたが、むしろ是非それはやってほしいと思った。今回の映画では平井は悪役でしかなかったが、平井の良い部分、すごい部分が的確に伝わるようなドキュメンタリー映画は作れるかもしれない。それが作られたら、「あー、映画って本当にプロパガンダとして優秀すぎて危険だな」という感想を多くの人が持つだろう。もっとも、平井だと少し魅力が足りないかもしれない。鈴木貴子議員とかどうだろう。

立憲民主党代表選について

ところで、総選挙後におこなわれた2021年の立憲民主党代表選で結局、小川は敗れた。

この紹介したNHKの記事がなかなか面白い。全部無料で読めるのでおすすめである。

この記事を読んで思ったのが、「結局、小沢一郎とは何だったのか」の総括が成されていないということだった。小沢はこれまで長年にわたって日本政治をかき回してきたが、おそらく最後の仕事が、この「泉健太を立憲民主党の代表にする」、だったということになるのではないか。しかし泉では結局、国民に対するインパクトは今のところ薄い。むしろ大島監督、「小沢一郎とは何だったのか」ってドキュメンタリー撮ってくれないかな、と思った。

案外、今回の選挙で土が付いた辻元清美あたりが挽回してくる可能性もあるかもな、と思った。

(了)

編集者、ライター。1986年生まれ。2010年からカルチャー誌「PLANETS」編集部、2018年からは株式会社LIGで広報・コンテンツ制作を担当、2021年からフリーランス。現在は「Tarzan」(マガジンハウス)をはじめ、雑誌、Webメディア、企業、NPO等で、ライティング・編集・PR企画に携わっています。
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