基本、このサイトの更新は大半を無料にしています。今後もおおむねそれは同じです。というのも、これまで自分も無料のブログ記事を参考にしきたことが多かったためです。
僕は最初にベンチャー的な出版社で働いた後に転職し、2020年までWeb系企業で働いていたのですが、Webには「オープンソースの思想」というのがあります。簡単に言えば「役立つことをどんどん無料でオープンにシェアしていくことで社会の進化に貢献しよう」というものです。
その考えをもとにこのサイトは無料でやってきて、それは基本的に変わりはないのですが、今後は一部を有料化したいと思います。今回はそのことについて、基本となる考え方を少し詳しめに書きたいと思います。
以下、前半は理論的な話が続くので、有料マガジンの概要をとりあえず見たい方は、下記のボタンをクリックしてもらうと一気に該当箇所まで飛べます。
Webのしくみについて
僕のこのサイトは、WordPressというコンテンツ・マネージメント・システム(略してCMSと言います)で作っていますが、WordPressの技術自体は無料で使うことができます。WordPressという仕組み自体が、上記のWebのオープンソース思想を大事にしているためです。
ですが、このサイトはサーバーをレンタルしていて、また独自ドメインで運営しています。
基本的にWeb上のコンテンツはどんなものであっても、データを置いておくためのサーバーが必要です。TwitterやFacebook、TikTok、YouTube、noteなど無料で使えるように見えるものも、運営元企業がデータを保存しておくサーバーを持っていて、それには維持費用がかかります。
SNSやプラットフォームサービスの場合、サービス内に広告を配置することによって、その広告費用でマネタイズするというモデルです。
もっともnoteに関しては基本的に広告なしでユーザーがデータを置いておくことができますが、それは一部の有料noteを販売しているユーザーの売上の中からnote社が売上を得ているからです。他にもnoteはいろいろな有料サービス(たとえば企業オウンドメディアの運営支援など)を売っていますが、そういった売上から無料ユーザーの経費を支出している、という仕組みになっています。
これは、かつてはよく「フリーミアムモデル」と言われていました。概念的に言えば1割の有料ユーザーが他の9割の無料ユーザーを支える、というものです。無料のSNSやブログサービスはほとんどこのモデルで運営されています。
このサイトはどうやってできているか
さて、このサイトのような個人サイトの場合はどうかというと、サーバーはレンタルサーバー会社と契約して自前で調達しています。このサイトはさくらインターネットのレンタルサーバーを使っているので、月額500円程度かかります。
また、このサイトは独自ドメインnidoneinstitute.comというものにしていますが、独自ドメインの運用にも費用が必要で、年間3000〜4000円程度かかります。年間で言うとレンタルサーバー代が500円×12ヶ月=6000円、独自ドメイン費用で4000円として、年間1万円程度を自分自身で払っています。
noteを使わないのは「独立性」を保つため
なぜnoteなどのサービスを使わずに、自分でサイトを運用しているかというと、究極的には独立性を保つためです。たとえばもし仮にnoteがサービス終了したら、noteのコンテンツを他のサービスに移さないといけません。また基本的にnoteがNOを出したらコンテンツは掲載することができません。そういったかたちで首根っこを抑えられているということが、独立性を損なってしまうわけです。
noteに限ってはそうそうサービス終了しないと思いますが、Webサービスは案外短命です。有名どころではたとえば、少し前にYahooの「Yahoo!ブログ」、GMOの「ヤプログ!」がサービスを終了しました。もちろんサービス終了を知ってからバックアップを取り、他のサービスに移し替えることは可能ですが、そこまで意識の高くない一般ユーザーが書いてきた記事などはほとんど消えてしまうことになります。これは実は歴史が消える、ということを意味します。
そういった事態を避けてインディペンデント(独立的)にやりたい場合は、自前でサイトを構築し、サーバー代やドメイン費用を捻出する必要があるわけです。もちろんレンサバ会社のさくらインターネットがサービスそのものを終了する可能性もなくはないですが、無料ブログサービスに比べて危険性は低いです。さくらインターネットはほとんどが有料ユーザーであり、フリーミアムのビジネスモデルではないからです。大手サーバー会社は、もはや東京電力や東京ガスに近いインフラ企業になっているわけですね。
「ファクトチェック」の問題、グレート・ファイアウォール
インディペンデントという意味では、noteはもちろんTwitterやYouTubeなどは近年、コンテンツの内容に「ファクトチェック」を理由に介入するケースが増えています。もちろん僕はファクトベースで書くように気をつけていますが、「ファクトチェック」というのはある種の暴力性を伴います。チェックする側が、いくらでも恣意的に「ファクトかそうでないか」を決定できるためです。いち私企業にコンテンツの内容に介入する余地を多く残しておくことには、そういった危険性があるわけです。
さらにいえば、実は「Google八分」という問題もあります。このサイトのように独自ドメインでWordPressで運用しているサイトの場合、無料ブログサービスなどに比べてGoogle検索上位で優遇されがちです。今はこのサイトも、いくつかの検索キーワードで上位にあるため、ドメインパワーが強い(=サイト自体のGoogleからの評価が高い)状態ですが、将来的にGoogleに「このサイトは駄目だ」と狙い撃ちされて検索結果に一切表示されなくなる、という可能性もゼロではありません(こういう事態は「Google八分」と言われます)。
Webの空間の魅力だった「言論の自由」、それはいつでも無くなりうる状態があるわけですね。これは中国政府が運用している「グレート・ファイアウォール」=大規模検閲システムの存在を思い浮かべればすぐにわかることです。noteやGoogleなど私企業が権力を持っている場合、それらの会社が次第にグレート・ファイアウォール化する可能性も、別にゼロではないわけです。
まあ一般人にはこういうことを気にする必要はあまりないと思われるかもしれませんが、ここで述べているような発想は、Webの「オープン」の思想からすれば非常に自然なことではあるのです。
収支はトントン、もしくはやや赤字です
すごい抽象的な話から突然スケールの小さい話に行きますが、すでに述べたようにこのサイトは年間1万円の経費がかかっています。その経費は基本的に、GoogleアドセンスとAmazonアソシエイトで賄っています。
Googleアドセンスというのサイト上に現れるバナー広告ですね。これはユーザーが見た数(インプレッション)と実際に広告をクリックした数に応じて配分されます。
今は全然やっていませんが、前はこのサイトでSNSバズを狙って記事を書いたことがあって、そのときには1記事に1日で2万PVとか来ましたが、そのときのアドセンス収入は2000円ほどでした。万バズでその程度ということなので、アドセンスは全然、割のいいものではありません。
ちなみに万バズというのはある程度まで狙えますが、炎上も兼ねるので、書く人にはアドセンス収入の何十倍かの経済リスクがあります。というのも、仕事を失うこともありえるからです。
また、ブログ以外のことがまったくできない状態になるので、メンタルの強さも必要です。おそらく今売れているYouTuberの人たちはそういうメンタルの強靭さがあるのではないかと思います。
細かいことを言えばアドセンス収入を増やすには単純に広告設置箇所を増やすとか、ページ分割して遷移後にオーバーレイ広告を入れるとか、もしくは誤クリックを促すような工夫などもできます。それらは多くのまとめサイトがやっていることですね。しかし、それをやるのは単純にストレスフルな経験をユーザーにさせることになるので、このサイトでは最低限の箇所にしか広告を貼っていません。
またブログの月間PVそのものを増やすという施策も可能ですが、上記のように炎上を伴った万バズを狙って記事を書くことになってしまいます。基本的なスタートとしては「趣味でやっている」ということが大きいので、楽しく書けない・更新できないようになっては自分にとって意味がありません。
そういったこともあって、今はこういったコンテンツ内容になっていて、万バズを狙うということはしていません。その結果、アドセンスとAmazonアソシエイトの年間収入と年間経費がだいたいトントンで、最近はAmazon収入がほとんどないのでほぼ赤字、というのが正直なところです。
Amazonアソシエイト、今は大した収入にはらないです。実は「Amazonアソシエイトの収入を増やす」というやり方もありえるのですが、そうなるとAmazonの売れ筋商品を勧めるとか、もしくは高単価の商品を勧めるという方向に必ず進みます。そうなると「書きたいことを書く」ということをしなくなり、手段と目的が逆転してしまうことになります。
ここまでをまとめると、要するに「ゲームハック」の方向に行くことは避けたいのですね。
最近の状況
過去には「万バズを繰り返してサイトを育てる」ということをやって、月間PVが数万になることもありました。そのまま右肩上がりに育てるにはやはり「万バズを狙う」ということを何度も繰り返す必要があります。しかしブログは人生のごく一部であって、趣味がスタートなので、そうなってしまうと自分自身の生活が不幸になっていってしまいます。
でもここ最近、ブログをよく更新していることで、月間PVは徐々に上がっています。前のようにドカンと上がってベースPVが上がって、またドカンと上がって…みたいな上がり方ではなく、ものすごいじんわりとした動きです。
それで思ったのが、ブログにはブログなりのクオリティしか投入しておらず、他のメディア仕事でお金をもらうときは全力を投入しているのですが、ときどき自分のブログ(=自分のメディア)でも、もっと強めに投げられるようにもしておきたい、ということでした。
実は前にcodocという、noteに似たサービスだけど独立系サイトにもペイウォールを設置できるサービスを、導入だけしていました。このあいだ数年ぶりにダッシュボードを覗いたら、そこそこに売上があったんですね。でもその有料記事の有料部分には大したことを書いてなかったので、購入してくれた人にちょっと申し訳ない気持ちになりました。
少し前にニュースレター(要はメルマガ)のサービスが流行っていましたよね。僕はニュースレターのサービス自体はすごくいいと思う反面、完全クローズというのもちょっとWebっぽくないな〜とも思ったのです。Googleの検索結果で引っかかるということもないわけですよね。あと、せっかく有料登録したのに更新してくれない人多くないか…?という。そういうことを考えると、僕はほっとかれても勝手に更新するので、このサイトで月額サブスクで有料マガジンをやってみてもいいのかな、と思いました。
あと、ここまで偉そうかつ意識の高いことを言ってきましたが、身も蓋もないことを言ってしまうと、最近は執筆になるべく専念しようということで、素で外注仕事を減らしている(減っている?)ので、素朴にお金があるとありがたいです(←ココ重要)。
有料マガジンの形式
ようやく本題に来ました。長かったですかね……。
使うサービスはcodocで、ひとまず月額330円にします。最初はもうちょっと高くてもいいかなと考えましたが、「あ、欲が出てるな」と思って330円にしました。要は、月にいちど激安居酒屋でビール1杯おごってもらう、というイメージです。居酒屋に入ってビール1杯って500円が普通で、390円だったら「安いな」と思うわけですが、330円だったら「激安!」という感じになりませんか?
ちなみにcodocにしたのは、サービスの提供方法がそこまで独占的ではないのと、まあまあnoteに似ているユーザーインターフェースと、課金のしやすさ(ここまで似てていいのか?笑 と思う部分はありますが…)があるからで、ひとまずこれでやります。
サービス面では、codocにもニュースレター機能あるといいのにな〜と思うのですが、今のところはないので、しょうがないですね。もっとも、過去に仕事でニュースレターを触ってみて思ったのは、ユーザーとの距離感が「近すぎる」ということでした。近すぎると更新ハードルが高まるんですよね。より正確に言うと、精神的なプレッシャーが高まる、ということでしょうか。
普通のブログだと「遠い」ですし、ニュースレターの「近い」との中間ぐらいがいいんですけど、それっていま更新しているブログの内容とも近くはあるんですよね。有料部分は、そこから2〜3mm近くするぐらいのイメージでしょうか。
有料にするのはどんな記事か、誰に向けたものか
いままでどおり、大半の雑記的な記事は無料で、そのまま公開します。
有料マガジンにするのは、現時点では読書ブログになります。しかもおそらく記事内の半分以上は無料です。
今のところ、ちょっと難し目の本、古典、ボリュームの大きい本などを読みながら、内容を読み解いていくというものを考えています。ひとまず取り上げる予定のものは下記です。
- ノルベルト・エリアス『スポーツと文明化』
- 玉木正之『続・スポーツ解体新書』
- ロジェ・カイヨワ『遊びと人間』
- ヨハン・ホイジンガ『ホモ・ルーデンス』
- 養老孟司『身体の文学史』
- 押川春浪の「海底軍艦」シリーズ
- ノルベルト・エリアス『文明化の過程(上・下)』
- アリストテレス『詩学』
- ミハイ・チクセントミハイ『フロー体験 喜びの現象学』
- 佐野眞一『巨怪伝(上・下)』
要するにこれらは、自分の執筆のタネなんですよね。でも、内容が難しいとか、読むのに時間がかるということで、なかなか読み進んでいなかった、という問題がありました。本の解題をして残しておきたいけれど、引用が多いとか文量が多くなるので、自分の執筆仕事(「文化系のための野球入門」など)の本文に入れられない、という問題があります。執筆テーマと全部が全部、関係があるわけではないからです。
なので、この有料マガジンの第一目標は、「文化系のための野球入門の執筆をなんとか終わらせたい、そのために必要なインプットのためにアウトプットをしてしまう」というものです。
ちなみに引用が多くなる読書ブログのようなものを有料で公開していいのか? と疑問に思われる方もいるかと思いますが、著作権法上、批評や研究自体はどんな形式であれ自由であることがまず前提としてあります。その上で、著作権法上の「引用要件」と言われる条件を満たすことが必要です。その点は適切に配慮します。
で、読了してから書くのではなく何回かに分けて書きます。内容の濃い本たちなので、一回では無理です……。あと読書ブログって、「読了してからでないと書いてはいけない」という思い込みが一般にあると思うんですよね。だからなかなか書けない。でも逆に、「読了してなくても途中で公開しちゃう」と決めると、一回書き始めたら読了しないといけないので、自分へのプレッシャーになります。
また、いわゆる売れ筋のベストセラーではない古典とか古い本の解題記事は、同じ関心を抱いている他の研究者や学生などが検索でたどり着いて、参考にしてもらえるというのもあるでしょう。僕もときどき検索でたどり着いた解説記事を買ったりします。なので、一回一回買い切りのメニューも用意しておきます(値段はサブスクと同じ330円)。
つまり「誰に向けたものか」でいうと、要は「未来の自分」、または「まだ知り合っていない、関心を同じくする同志」に向けたもの、ということになります。
もっとも、そうでなくても、「中野がなんかよくわかんないけど頑張ってるみたいだから、月に1杯、安いビールでもおごってやるか」という方がいたら、ぜひ月額330円のサブスクに課金していただければ幸いです。中野という人間の考えている浅いこととか深いこと(?)がわりとわかるので、もしかしたら参考になることもあるかもしれません。
他のタイプの記事
また読書ブログにかぎらず、「文化系のための野球入門」用に書いていた草稿を整理していくなかで、明らかに本からはこぼれるだろう原稿も、こちらにアップしていきます。(この部分、2022年11月3日に追記)
そしてもうひとつ、もしかしたら、この世界のごく一部から熱烈に待ち望まれていると言われている、昔書いていたカルチャー批評のような記事などを書きたくなったら、それも一部有料にするかもしれません。(過去にLIGで週イチ更新していたカルチャー批評記事の一覧→https://liginc.co.jp/series/ligch )
更新ペースと方針
更新ペースですが、約束できるのは、月に1本は確実に更新することです。
偉そうに言い切ってみましたが全然偉くないな……。でも、多分なのですが、おそらくもっと更新すると思います。とにかく文字を書きたい欲がものすごくあるので。
有料部分の内容の方向性については大まかに2つの指針があります。
①ゲームハックをしない
→GoogleアドセンスやAmazonアフィリエイトなどのところで少し書きましたが、何らかの「ゲーム」を攻略しようとすると、どんどん初期の志・方向性からズレていきます。手段と目的が逆転しないためには、裏返せば「自分が面白いと思うこと」「必要だと思うこと」を、外部環境に依存せずにやるというのがいいのかなと思います。
②ペイウォールがあるからといって裏垢化しない
→ペイウォールがあると愚痴っぽくなったりマイナスな方向に振れるということがあると思います。SNSなどで裏垢でぶっちゃけ話をしているアカウントがありますが、個人的にあれってスッキリするようでいて実は逆にストレスフルになる気がするんですよね。ペイウォールがあったとしてもパブリックであるという意識は必要です。裏返すと、トータルでポジティブなものを出す、ということが重要かなと思います。もちろん全面的にポジティブである必要はなく批評精神は重要ですが、何かに対する批判であってもトータルでみればポジティブでありたい、ということです。
更新情報について
更新状況はSNSなどで告知することもあれば、しないこともあります。
というのも、有料コンテンツの更新頻度が高くなってSNSを用いた告知リソースもそれに取られるようになると、「そういうアカウントなのかな?」感が出てしまうのがイヤだからです。
なので月額サブスクをしていただいた方は、このサイトのトップページを、スマホのブラウザなどでブックマークしておいて、ときどき来ていただくのをおすすめさせてください。
▼にどね研究所 トップページはこちら。
以下、有料マガジンの機能を使ってペイウォールの後ろに少しテキストを書いてみます。ペイウォールはこういう見た目になります。書いてあることは、完全に余談です。
ちゃんとした有料記事は明日17時から公開し始めます。
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