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『ドラベース ドラえもん超野球外伝』は現代野球の教科書だった!?~もしも現役草野球監督が『ドラベース』を読んだら~ | にどね研究所

『ドラベース ドラえもん超野球外伝』は現代野球の教科書だった!?~もしも現役草野球監督が『ドラベース』を読んだら~

漫画

みなさんこんにちは。かしゅーむです。サラリーマンと草野球監督の2足のわらじを履いています。

何度か記事を更新させていただき、やっとプロフィール的なやつが表示される様になりました!詳細は文末をぜひご覧ください!

緊急事態宣言の煽りを受けて、グラウンドが使えない日々が続いていますが、今回はその思いを記事にぶつけることにしました。

現代草野球は22世紀と一緒!?

というわけで今回は『ドラベース ドラえもん超野球外伝』です。

とりあえず詳細はこちらをご覧ください。簡単に言うと22世紀のロボットと人間たちが楽しく草野球をする漫画です。

ドラえもん×草野球というシュールな組み合わせですが、作者のむぎわらしんたろう先生が草野球経験者ということもあり、なかなかの熱量で書かれた作品になります。

連載されていた2000年ごろは僕は小学生であり、非常に楽しく読んでいました。

先日、地元の友人とこの作品の話で盛り上がり、久しぶりに読んでみたいと思い、イッキ読みしてみました。現在の草野球チームの監督という立場で読んでみると色々と気になるところや「これあるなー!」と共感できる点が多かったので記事にしてみたいと思います。

ひみつ道具が予見していた現代草野球

『ドラベース』の世界では1試合に3つ(大会によってはひとつ)のひみつ道具の使用が認められています。これが試合の結果を左右するという設定になっており、作品の魅力のひとつでもあるのです。

これが現代の草野球を予見していると僕は考えます。現代の草野球は道具面において独自の進化を遂げており、高校野球やプロ野球とは一線を画しているといもいえるでしょう。

例えば、もはや使用するのが当たり前化している「ビヨンドマックス」をはじめとする複合バットの登場です。木製や金属製のバットを使うプロ野球や高校野球と違い、草野球ではこの複合バットの使用が認められています。

他にもボールの回転を計測する「テクニカルピッチ」や空気で膨らませるバット「LEGATOZERO(レガートゼロ)」など、それこそ漫画に登場するようなギアが草野球界を席巻しているのです。

「ビヨンドマックス」の販売開始は2002年と、『ドラベース』の連載開始の後になっています。ひみつ道具とまではいきませんが、テクノロジーでプレイの幅を広げることで草野球というスポーツがガラパゴス化して、独自の進化を遂げたのです。僕のチームには高校野球の経験のない選手もますが、「ビヨンドマックス」を使いヒットを打つなど、「野球=経験者のもの」というイメージを変えるのに成功していると思います。この様に道具の力で野球を楽しむという概念をこの漫画は予見していたのです。漫画の舞台は22世紀ですが(笑)。

『ドラベース』1巻88ページより。本家(?)『ドラえもん』に登場したひみつ道具が試合の勝敗に大きく影響するのがこの漫画の特徴です。

 

『ドラベース』1巻135ページより。これはひみつ道具は使わない魔球「ホワイトボール」です(笑)。投げてる本人いわく握り方があるそうです……。

草野球のリアルも描かれている

『ドラベース』の特徴の1つとして挙げられるのが、登場するロボットのほとんどが「職業」を持っているところです。例えば主人公のクロえもんはピッチャーのひろし君の家にお手伝いロボットとして派遣されてくるなど、何かしらの職業をこなしながら草野球を楽しんでいます。ここが草野球の描写としてリアルだと僕は考えます。

草野球はあくまで趣味。普段は何かしらの仕事や学業をしている人たちが集まるものです。仕事の都合でチームの主力が来れなくなるといったことが、草野球では頻繁に起きます。個人的にはそれが草野球の醍醐味だと考えていますが、『ドラベース』にも仕事を理由に選手がチームを離れる、一時的に参加できなくなる、といった描写が見られます。これは普通の野球漫画では見られない描写です。この草野球のリアルを描いているところが、この作品の面白さのひとつだと思います。

ドラベースのここがすごい!

続いて、ドラベースの作品の面白さについて書いていきたいと思います。

『ドラベース』こそ王道の野球漫画だった!?

あらすじや概要を読んでいただいた方はなんとなく感じたと思いますが、『ドラベース』の設定は若干シュールではあるものの、ストーリー展開は非常に王道な野球漫画だといえます。

例えば、主人公のクロえもんが所属する江戸川ドラーズは当初、弱小の草野球チームとして描かれています。しかも投手はドラえもんで、のび太の世話を理由に第1話から20世紀に帰ってしまいます。そこで登場するのが、クロえもんの住む家のひろし君。ひろし君は、家業の運送業を手伝ううちに、強靭な足腰と肩を手に入れ、剛速球を投げることができたのです。その才能を見出され、ドラーズに加入。初勝利を目指してライバルチームとの対決を制して、ドラ―ズがチームとして成長していく……。

どうでしょう? 非常に王道なストーリーじゃないですか?

他にも、クロえもんのライバル、シロえもん(魔球を投げます)の登場など野球漫画の「王道」というべき要素がこれまでかと詰め込まれています。しかし、一貫して登場人物たちの「野球への情熱」が色濃く描かれていると同時に小学生を意識したシンプルなギャグ描写のおかげもあり、胸焼けせずに最後まで読むことができました。

「なんでボールがWの形で曲がるんだ?」「ロボットが肩を壊す?修理すれば?」などの愛すべきツッコミポイントもありつつ、絶妙なバランスで『ドラベース』は成り立っているのです。

ベースはあくまで「草野球」にある

そしてこの作品の最大の特徴は、一貫して主人公たちは「草野球」の選手として描かれているという点です。どんなに熱い戦いをしていても結局は「草野球」。そこには年俸もファイトマネーも発生しない戦いなのです。

しかし彼らはまるで人生を賭けた勝負であるかの様なアツさで試合を展開していきます。なんなら、シロえもんはプロ野球から指名を受けても、オファーを蹴ってクロえもんとの対決を望みます。こうした草野球ワールドの中、ラストシーンも普通の試合のシーンで終わります。プロでもなく、社会人や高校野球のようなアマチュアでもない草野球人たちの戦いを描き切ってこの作品は終わります。ここまで徹底的に「草野球」にこだわり抜いて書き切った作品だからこそ、この作品は熱量を保ったまま完結することができたのです。

「草野球」だからこそアツくなれる理由

ではなぜ「草野球」を題材に選んだこの作品が、ここまで熱量を持ったまま完結を迎えることができたのかを考えていきたいと思います。

そこでは、繰り返しになりますが、「草野球」の最大の特徴である、「あくまで本業とは別の趣味」ということが深く関わってくると僕は考えます。

仕事がや家庭がどんなに上手くいっていなくても、球場に来れば野球ができる。なんと素晴らしいことでしょうか。これは野球が素晴らしいということではなく、仕事以外の居場所があることが素晴らしいという意味です。「草野球」という言葉自体は「レベルの低い野球」というニュアンスで使われることがしばしばですが、実際はいい大人になっても野球が好きな人たちのギークカルチャーだと思います。

そんな集団だからこそ野球に全力になれのです。少なくとも社会人となり、会社とまったく関係のない草野球チームに所属している僕は全力で野球に取り組んでいます。なんなら高校時代よりも真摯に野球に向き合っている気さえします。そういった草野球プレイヤーたちだからこそ、甲子園以上に熱い野球ができるのです。

オタ活でもそうですが、自分が本当に好きなものだから熱くなれるというわけです。ちなみに中学・高校の野球部の同期で現在も野球をしているのは2~3人しかおらず、万年補欠でチーム一野球が下手だった僕が今も野球をしているのもなかなか面白い状況だと思います。「草野球」という趣味だからこそ全力で戦える。これが『ドラベース』がアツい漫画である最大の理由なのかもしれません。

さらに個人的な話をすると、ひろし君がとある理由でケガをしてしまったシーンは心に来るものがありました。僕自身、草野球の練習中に腕を骨折するという選手生命を脅かす大ケガをしてしまったことがあります。「いやそんな大げさな」という方もいるかと思いますが、ケガから復帰するまでの約1年間は本当に辛く、地獄のような日々でした。大事な趣味がひとつ減ることで私生活のリズムが崩れたのです。ひろし君がケガから復帰したシーンは本当に号泣してしまいました。どこまで伝わったかはわかりませんが、それだけ野球が好きだからこそ、「草野球」にのめり込めるのです。

『ドラベース』が最強である

若干脱線しましたが、ドラベースの登場人物たちのモチベーションは「野球が好き」ということです。これが非常に面白い効果を発揮し、結果として、たかが趣味とされる「草野球」が非常にアツい展開の漫画に昇華したと僕は考えます。

かわいい幼馴染のためでも、死んだ父親のためでもなく「野球が好きだから」。なんとストレートな動機でしょう。ここが他の野球漫画とドラベースが大きく異なる点だと思います。実際に数々の野球漫画の主人公たちの動機って、意外とふわふわしてる気がします。肉親が死ぬか、生まれながらの才能があり、気付いたら野球をしているとかそんなパターンが多いのではないでしょうか。

『ドラベース』はコロコロコミックで連載されていた変わり種漫画と思われがちですが、非常に斬新な着眼点の漫画とも言うことができるでしょう。

街場の草野球論 始動

今回は『ドラベース』がなぜアツいかということを書いてきましたが、ここからは更に脱線します(笑)!

街場の監督論①~名将はいらない!?~

『ドラベース』には「銅羅之輔(どらのすけ)監督」というキャラが登場します。登場初期は敵の弱点を見抜き、的確なアドバイスを与えるなど、いわゆる名将として描かれていました。しかし、作品の後半になると勝利至上主義の悪役のようなキャラとなり、作品から退場してしまいます。

個人的にこの描写は非常に象徴的なシーンのひとつだと考えます。チームによって異なることは重々承知ですが、草野球の最大の目的は「野球を楽しむこと」だと僕は考えます。確かに勝つに越したことはありませんが、勝利至上主義のチームは組織としてうまく回らないことが多いのです。なぜならメンバーのレベルがバラバラだからです。野球に関するバックボーンがバラバラなメンバーが集まる中、勝ちにこだわった采配をすると、プレーに自信のないメンバーやモチベーションが高くないメンバーは野球の楽しさを感じることができず、いずれチームを去るでしょう。草野球には、強烈なキャラと采配でチームを引っ張る「名将」はいらないと僕は考えます。

街場の監督論②~理想の監督像~

ではどういった監督像が草野球にふさわしいのでしょうか。わかりやすい評価指標として、「参加人数」が一番だと僕は考えます。「チームの雰囲気が良い、野球が楽しい」と思ってもらえれば必然的に参加者が増え、選手層が厚くなり、チームの能力が上がります。また、野球が楽しければ活動に前向きになり選手個人の能力も上がりやすくなります。

この「雰囲気を良くする」⇒「人をたくさん集める」⇒「野球を楽しんでもらう」といったサイクルを常に回し続けることが重要だと考えます。勝ちを目指すのではなく、楽しんだ結果、勝てるのです。

ですので雰囲気づくりの能力や、人を集める人望が草野球監督において必要な資質だと僕は思います。高校野球の名将というよりは、名物プロ野球監督(長嶋さんや中畑さん)のイメージが近いかもしれません。

街場の監督論③~采配編~

次は僕が采配(と呼べるほど高度ではありませんが)のときに意識していることを書いてみたいと思います。

  • 打順は固定しすぎない
  • 全員出場が第一優先

これくらいでしょうか?(笑)よっぽどガチガチの公式戦でない限り、そのときの調子や出席率で打順を上げたりしています。やはり頑張ったり上手くなった結果が打順に反映されないと楽しくないと思うのでここは強く意識しています。実際は難しいですが、なるべく全員が普段打たないような打順を考える様にしています。

偉そうに書いてきましたが、こういった采配以外にも草野球運営に必要な業務は何個もあります。特にグラウンドの手配、対戦相手の募集、審判の手配など非常に多くの運営業務があり、これがなかなか大変なのです。僕は怠け者なので、これらをほぼ全て他の方にお願いしています(笑)。なので、余り偉そうなことは言えないというのが本音です……。いつも本当にありがとうございますという感謝の気持ちをここに記しておきます。

最終的に話が逸れましたが、今回は『ドラベース』について書いてきました。個人的には「街場の草野球論」はシリーズ化したいと思っているので、また機会があれば書いてみたいと思います。

かしゅーむ

茨城に生まれ、大学時代は仙台で過ごしました。平日はゆるふわ系サラリーマンとして働きながら草野球などの趣味を楽しんでます。趣味は深夜ラジオ、野球、競馬、MCバトル動画漁り、二郎系ラーメン。ツーシームが投げれます。Twitter→@kasyumu

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