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なぜプロ野球選手が「見逃し三振」をするのかが最近やっとわかった。 | にどね研究所

なぜプロ野球選手が「見逃し三振」をするのかが最近やっとわかった。

(Do) Sports

最近全然このブログを更新していなかったのですが、めちゃ仕事が忙しくなっており、わりとそれが大きいです。空いた時間に執筆も進めているのだが、ブログを書くことは一番後回しになりがちです。

でも最近、会社で編集・ライターの採用面接にたくさん出るようになっていて、そこで聞くことで「頼まれ仕事ではない自発的なアウトプットの有無(たとえば自分のブログを書くとか)」ってけっこう大事だったりするんですが、「みんな編集とかライターの仕事をやりたいって言ってるわりに、あんまり自己発信していないんだなー」「自己発信できていない人はあまり歓迎できないなー」と感じることが多いんですね。

おいおい、でも今のお前自身は、仕事以外でちゃんとアウトプットしてんの?

偉そうに「時間がなくても、話題はなんでもいいから、仕事に関係ないアウトプットは習慣的にしたほうがいいよね」って人に言う権利あるの?

……ということが自分に対してブーメランとして返ってくるわけです。

なので「話題はなんでもいいから書こう」というわけで、最近、野球をしていて気づいたことについて書こうと思います。

Web記事を作ったことで野球と「再会」した

僕は中学から野球をはじめて、学生時代は(微妙にインターバルはあるものの)ずっと野球をやっていて、でも学生野球をやり終わるまでにひととおり野球が嫌いになって、20代前半からは全然やっていませんでした。

それが、4〜5年前に前職の編集長に「そんだけ野球に詳しいんだったらそれで記事をやってみたら?」と言われ、実際に記事をつくったら、当時のそのWebメディア史上最大のPVを叩き出したんですね。で、その後も、野球関係の記事を出すと、有料メディアにもかかわらずアベレージ5000PVぐらい読まれる。1万超えも何回かあったはず。「共感しました!」みたいな声もめっちゃあって。

まあその結果もそうなのですが、ひととおり嫌いになったはずだったのに「あれ、野球ってけっこうおもしろいんじゃ……?」ということを感じ始め、その過程で某出版社社員が母体の草野球クラブチームに声をかけられて入団し、いまでは最低月2回ぐらいはやるようになりました。

なんか野球うまくなった

本格的に活動し始めていま3年目なのですが、学生時代にくらべて野球がどんどんうまくなったように感じます。昔は毎日練習して全然うまくならなかったのに、今はトレーニングを含めて月4〜6日程度しか動いてないのに、どんどん向上する。

いまメインで活動しているクラブチームでは年間20試合くらいやっているんですが、1年目は打率5割超え、2年目は4割弱で2年連続チーム首位打者で、今季も.460ぐらい打てています。まあいわゆる「草野球」だからだろって感じなんですが、わりとガチめなリーグにも所属していることがあって、ピッチャーのレベルはけっこう幅があり、平均的な高校野球レベルより良い投手もちらほらいます。なので全体的なレベル感としては中学野球以上、高校野球ちょい未満という感じかなと。

急に打てるようになった要因はよくわからないんですが、端的に「頭がよくなったから」「自信がついたから」ではないかと思っています。

学生時代は「どうせ野球ヘタだし……」という思い込みがあって、わりと消極的に四球狙いみたいな感じの打者だったのですが、最近は「とにかくファーストストライクに手を出そう」ということを心がけていて、それが高打率にかなり影響しているのではないかなと。

たいていのピッチャーはファーストストライクを甘いところに投げてくるんですが、そこをちゃんと強くスイングで捉えることができれば安打になるし、多少打ち損じても迷いのない強いスイングなのでファールか空振りになる。強いスイングをしてファールか空振りになると、不思議なことにピッチャーは勝手にプレッシャーを感じてくれるんです。

特に、空振りしたあとに「フッ……」「計画通り」みたいな顔をすると極めて効果的だと感じています。

麻雀やポーカーと同じで、ハッタリがすごい重要。

そうやってプレッシャーを与えつつ自分が精神的に優位に立てるので、その後のカウントでも自分のペースで進められる。だから「とにかくファーストストライクに手を出す」というのは良いセオリーなわけです。

自分が喫した「見逃し三振」になぜか感動した件

で、このあいだの試合で、自分の記憶ではほとんど初めてぐらいの「見逃し三振」をしました。それはもう、ものすごいキレイな、糸を引くような低めのストレートに。

そんで、なぜか「これが進歩か……!」と感じたんですね。

なんでかっていうと、学生野球では見逃し三振ってすごい「悪」とされているんですね。これやるとめちゃくちゃ監督とか指導者に怒られる。「ファールで逃げることもしないとは何事か! 消極的でけしからん!」というわけです。

僕も子どもの頃はその精神論に何の疑問も持たず、2ストライクまで追い込まれたら愚直に、ストライクゾーンに来た球はストレートであろうが変化球であろうが、カットしようとしてファールにしたり、当てに行く弱いスイングで前に飛ばしてしまって凡退したりしていたんですね。

でも、ここ数年で「打てるバッターはどういうマインドか」ということをやっと自分のアタマで考えられるようになった。それはいろいろあるんですが、ひとつはやはり、「どんな局面でも強いスイングができる」ということなんですね。

強いスイングをしていれば多少バットの芯を外してもヒットになるし、もっと芯を外れていれば勝手にファールになるからです。

でも、強いスイングをするためには「どんなコース・球種でも当てられる」という待ち方で「当てに行く」ではダメなんです。どんな天才的なプロ野球選手だってできない。

で、その見逃し三振をしたときにどういう状況だったかというと。

まず相手ピッチャーは、非常にストレートのキレがいい本格派。120km/h前後くらいは出ていたはず。草野球でもたまに遭遇します。ただコントロールがあまりよくない荒れ球タイプ。場面はたしか塁上にランナーが二人ぐらいいるチャンスでした。

持ち球はストレートと、斜めに曲がり落ちるスライダー。

2ストライクに追い込まれていたので当然、完全にヤマを張るというよりはストレートとスライダー両方に対応したい。そうなると以下の3つのパターンに対応したいと考えたわけです。

  • ストレートにキレがあるとはいえ、真ん中から高めに来るストライクゾーン甘めであればヒットか、最低でもファールにすることはできそう。
  • 高めのボールゾーンからストライクゾーン真ん中付近に入ってくるスライダーが来たら、それは捉えたい。
  • ストライクゾーン低めからボールゾーンに落ちていくスライダーは空振りしてしまうので見切りたい。

この3つのパターン以外に勝負球として唯一ありうるのが、「低めにズバッと来るストレート」です。これは低めのストライクゾーンからボールゾーンに落ちていくスライダーと軌道が似ているので、基本的にそれは見送りたい。だとすると同じ低めの軌道で、そのままストライクゾーンに入っていくストレートが来たら諦めるしかないという結論になる。

当然、ピッチャー側もストレートを投げるのであれば低めにズバッと行くものをコントロールミスなく投げられればベスト。

で、このときは運悪く、ピッチャーが低めを狙ったストレートがズバッと来て、見送った。見逃し三振。

……まあだからこの場合は、ピッチャーを褒めるしかない。仕方ないな、と。

強いスイングをするためには、何個もの選択肢のなかでどれかを捨てなければいけません。2ストライクだから対応パターンは増やすんですが、どうしても全パターンは網羅できない。というわけで見逃し三振となったわけです。

プロ野球選手が「見逃し三振」をすることが不思議だった

そう、僕は昔からプロ野球選手ほどの技量の高い人達があんなに見逃し三振をすることが不思議だったんです。僕と同じように彼らも、学生野球で「見逃し三振は絶対悪」って教えられてきたはずじゃないですか。

でも、ここまで書いてきたようなことを彼らも考えているからこそ、学生野球では許されないような見逃し三振もしてしまうのではないかと。

見え方としては「無気力三振」に見えるようなかたちになっているかもしれません。

でもそれはリスクとリターン、「最良の結果を出すためにはどうすればいいか」を徹底的に自分で考え抜いた結果なのではないか。

……というようなことを、僕に関しては20年弱野球をしていてやっとわかったわけです。「その時点で本当に才能ないよなー」ということを逆にひしひしと感じています。

でも、学生時代に教えられていた型通りの思考停止な野球ではなく、こういうふうに自分で徹底して考えてやる野球はめちゃめちゃおもしろい! ということが今回の結論です。

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本記事の執筆者は中野ケイで、編集者・ライターやその他いろんな仕事をしています。本記事を執筆している2021年4月現在、PLANETSにて、「文化的な視点から野球を捉える」がコンセプトの連載「文化系のための野球入門」を月イチで連載中です。こちらの連載では文化論としての野球、について書いています。

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