『あの日、侍がいたグラウンド』を観てきた(一週間限定上映、7/7(金)まで)

野球に関する本を執筆中なため、とりあえずここ1年ぐらいは普段よりも野球に接することがすごく多くなってしまっているのですが、今年のWBC日本代表=侍ジャパンのドキュメンタリー『あの日、侍がいたグラウンド』を観てきたのでそれについて書きます。

このドキュメンタリー、やってるのは知ってたんですが、先日別の映画を観に行ったあと、同じタイミングで出てきた別のスクリーンの人たちの熱気がなんかすごかったので、「何の映画だろう?」と思って調べたらこの映画でした。で、この先の上映スケジュールをみたらほとんど予約で埋まっている。なので、とりあえず月曜夜の上映回が残り3席ぐらいだったのでとりあえず押さえて観に行くことにしました。

(※本文途中からネタバレがありますが、まあネタバレがあっても楽しめる映画だとは思います。ネタバレ部分が始まる箇所で「ここからネタバレ」と書きましたが、気にしない人は最後まで読んでいただければ幸いです)

映画公式サイト:あの日、侍がいたグラウンド|J SPORTS 


客層はおじさん少なく女性多め

さて今日、映画館に行ったら、月曜なのに大シアターがもう完全に埋まっていて、なんだこれ、って感じでした。SNSでも、別に話題になってる感じは観測してなかったんですけどね。

そしてお客さん、女性が本当に多い! 少女からおばちゃんまでいて、年齢的な偏りもそんなにないと思いました。一方で、いわゆる「野球好きのおじさん」はほとんどおらず、男性は若めのなんJ民みたいな人が多かったです。

日本代表の戦いぶりをざっと振り返ると

今回の侍ジャパンは事前の強化試合で苦戦するわ、ダルビッシュやマー君みたいなメジャーで活躍するスーパースターはいないわで、盛り下がると思われていたんですが、本戦に入ってからの戦いぶりは素晴らしく、徐々に盛り上がっていった感じです。結局日本での一次、二次ラウンドは全勝で、準決勝からのアメリカラウンドに進出したものの、準決勝で優勝国アメリカに1−2で敗れ惜しくもベスト4、王者奪還はならずという感じでした。

WBCは最初の2回は優勝し、前回はベスト4で、今回は世界王者奪還を期していたわけですが、それは成就できずという感じでした。まあこの結果は、最初のほうはあんまり本気じゃなかったアメリカや中南米諸国やオランダが本気出し始めたので、ある程度順当なんじゃないかと僕は思っています。他国のレベルが上がってきているので、最初の2回のように優勝というのは、簡単には行かないので、ベスト4(しかも優勝国アメリカに惜敗)というのは本当に健闘したと思います。

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スポーツをドキュメンタリーにするということ

最近のドキュメンタリー映画では特に、AKBの『Documentary of AKB48』シリーズの登場が大きかったのだと思います。実際にアイドルが「戦っている」その舞台裏は本当に壮絶で、ある意味ではフィクションをはるかに超える強度を獲得してしまった。そういった要素をスポーツ界も取り入れようとしていて、横浜DeNAベイスターズがペナントレース終了後に公開しているドキュメンタリー映画は毎回とても評判が高いです。ここ3年ぐらい連続でやっているんじゃないかと。

『FOR REAL』、正直ドキュメンタリー映画単体としてはまだまだだが、ベイスターズファンとしては楽しめる映画だった。キヨシ退任、ラミ就任、ボロボロの四月、なかなか勝てない今永、石田のブレイク、筒香の爆発、山崎の炎上、番長の引退、CS初進出&伏兵嶺井、梶谷の奮闘、広島での今永KO…2016年もいろいろあった。筒香の言う通り2017年は「本気で優勝を狙いに行く」しかない。 上映期間短い&横浜周辺の映画館でしかやってないので早めに観に行くのがオヌヌメですよ!応援上映もあるみたい。詳しくは http://www.baystars.co.jp/forreal/ (DeNAの回し者)

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▲昨年2016年シーズンのドキュメンタリー『FOR REAL』もけっこうよくできていました。しかし感想長いなこいつ。

スポーツチームの裏側に密着してドキュメンタリーを作れば面白いものができてしまう。昨年初めてクライマックスシリーズに出場した横浜(12球団で唯一まだ出場したことがなかった)、そして前評判を覆して健闘した今回の侍ジャパンが題材になれば、面白くないわけがないですよね。

それと、こうしたスポーツドキュメンタリーを観ていて思うのが、本当に情報量が多い。観に来る人たちは、選手たちがどんなキャラクターであり、試合結果がどうなったのかをあらかじめすべて知っているので、説明が省略でき、めちゃくちゃハイコンテクストな映像づくりが可能になっています。もちろん僕も基本的なストーリーを把握していたので、飽きる場所がまったくない。しかも自分がテレビや報道で知り得ない、選手に密着しているからわかる面白い部分だけピックアップできるので、二重三重に今回の侍ジャパンの姿を振り返ることができたわけです。

(ここからネタバレ)

少し例を出すと、三塁手の松田宣浩(福岡ソフトバンクホークス)という選手は、ファールを打ったあとに「おっとっと」と、ちょっと面白い動きをするんですが、映画を観るとなんと、実はその動きを練習しているということが明らかになります。みんなあれは天然で面白い動きをしているだけだと思っていたのに、「練習してたんかーい!」というツッコミがひとしきり入るわけです。他の選手もそうツッコミを入れていて、観客たちもそれに同調するという謎の輪ができあがっていたと。

あと、選手たちの絡みが面白いと思いました。日本ラウンドで全勝し、ロサンゼルスでの準決勝(VSアメリカ)に備えてアリゾナ周辺でキャンプをしていたとき、唯一の現役メジャーリーガーである青木宣親(ヒューストン・アストロズ/今回は主に3番ライト)が、レギュラー野手陣にメジャーのピッチャーの特徴を教えるシーンがあります。

青木が「とにかく先制しないと。リリーフの(アンドリュー・)ミラーとかマジで打てないから」「(WBCには出てないけど)シャーザーとかマジで打てないよ」とか言ってると、菊池涼介(広島東洋カープ/二番セカンド)が「でも筒香(嘉智:横浜DeNAベイスターズ/4番レフト)は打てるって言ってましたよ」などと嘘を言い、筒香は「いや言ってないっすよ!(笑)」と返すという、微笑ましいやりとりなども出ています。なんというか、これは選手同士の関係性とか、絆みたいなものが好きな人には本当に嬉しくなるシーンだと思います。

あとはやっぱり、オランダ戦で秋吉亮(東京ヤクルトスワローズ)が、普段はヤクルトでチームメイトで、今回オランダの4番を打っていたバレンティンを三振に仕留めたシーン。このときの秋吉の表情は本当に嬉しそうで、バレンティンも絶好機に三振してしまったので悔しがりつつも、普段頼りになるチームメイトに対してのリスペクトが感じられるような表情をしていました。ここは地味に、今回のWBC屈指の名シーンだったと思うのですが、そこもちゃんと映画には出てきます。(ただし裏話的シーンはなし。)

いろいろこの映画のレビューを見てると、「特定の選手、特に野手陣ばかりがクローズアップされている」という不満の声を見かけますが、まあ上映時間の都合上カットされるのは仕方ないのかなと僕は思います。いや正直、坂本勇人(読売ジャイアンツ)、牧田和久とか秋山翔吾(埼玉西武ライオンズ)のあたりはもうちょっと掘り下げてほしかったけども……。

総じて思ったのが、『弱虫ペダル』っぽいなぁ、ということで。単にゲームを観戦しているだけではわからない、『SLAM DUNK』以降のスポーツマンガ/アニメ的な部分=つまり選手たちの絆、チーム男子、みたいなものを現実の出来事から味わえるようになっているというのは、面白い変化だと思いました。

『あの日、侍がいたグラウンド』を観てわかったこと

ここからは映画の感想なのか、ドキュメンタリー映画を観て改めて今回の侍ジャパンに対しての感想なのかわからなくなってきます。まあなんというか、こういうタイプの映画の場合、そこの境界は完全に融解せざるをえない、ということは一個言えることかと思います。

で、映画を観て改めて思い知ったのが、松田と菊池は、本当によく声を出しムードを作っているということ。準決勝のアメリカ戦では先制点がセカンド菊池のエラーによるもので、最後の決勝点は松田のエラーによるものでした。しかし彼らは守備や打撃でさんざんこれまでチームを救ってきたわけです。

今回のWBCで良かったのは、結局「戦犯探し」みたいなことがメディアで盛り上がらなかったということ。1998年のサッカーW杯のあと、FWの城彰二や岡田武史監督へのバッシングはひどくて、2006年ドイツ大会や2014年ブラジル大会のときも似たようなことがありましたが、今回の野球WBCに関しては全然そんなことがなかった。それはやはり日本のスポーツ文化の進歩としてはポジティブなことだなと。

まあこの映画は、エラーして負けたあとの松田をさんざん映したりして、演出上仕方ないことは理解しつつも、ちょっと戦犯扱いしていたのは気にかかりました。僕も含め多くの野球ファンは、準決勝での菊池や松田のプレーを責めるという気持ちはあんまり持っていないんじゃないかと思いますが、このシーンの場合は、昔ながらのメディアの「戦犯探し」というムードに寄ってしまったのかなと。

それと小久保監督も大会前にはさんざん無能扱いされていましたが、試合前のミーティングでは、持ち前の言葉の力を使って選手をモチベートしようとしていました。小久保監督は、野球だけでなくいろんな本を読んだり講演会などに足を運んで各界の一流の人たちの話を聞いたりと勉強熱心な人だそうですが、そのあたりの持ち味が、代表監督という場ではよく出ていたのではないかと(もっとも、選手たちがちゃんと聞いていたかどうかはよくわかりませんが……)。

もちろんプロ野球の監督、たとえばノムさんのように試合をたくさん経験しているわけではないから、老獪さみたいなものはないわけですが、代表監督という難しい役回りをしっかりとまっとうできていたのではないかと思います。侍ジャパンは後任探しにいま苦戦しているみたいですが、王さんでも長嶋さんでも頼んで力を貸してもらって、小久保にもう一回頼んでみてもいいんじゃないかな……と思いました。

もうちょっと改善の余地が……

ただ、前述の『FOR REAL』にも感じたことですが、映像の場合は、本のノンフィクションとは違って、大本営発表になりがちだということです。コンテンツとしては映像のほうがわかりやすいのですが、都合の悪いことは隠されがちになると思います。

たとえば坂本勇人の場合、最近ジャイアンツが13連敗して話題になったように、いまの巨人での選手生活は彼にとってけっこう辛いものなのではないかと想像しています。そのなかで、菊池涼介と二遊間を組んでプレーしたのは、すごく心強くて、嬉しかったことなのではないかと。実際もうこの二人の二遊間のプレーはとんでもなく素晴らしいものだったと思います。

あ、そうだ。苦言をもう一個言うと、ナレーションはプロのナレーターの方でしたが、個人的には、そこを亀梨くんにするとか、そういう豪華さがあってもよかったのではと……! 客層からも明らかなように、野球というコンテンツのフレッシュさをこの映画はよくアピールしていると思いますが、亀梨くんがその流れにもっともフィットすると思うので。もしくは今井翼。

一応これはただの思いつきではなくて、亀梨くんも今井翼も野球好きとして知られていますし、亀梨くんは日テレ系「Going! Sports&News」でキャスターやってて、その仕事ぶりは古参野球ファンからもかなり評価が高くなっています。そもそもジャニーズ自体がもととも野球チームだったわけで、戦後日本と(もとはアメリカのスポーツである)野球というものを結びつける蝶番のようなものとしてスタートしていて、せっかくだったらそういう隠された戦後日本文化史とのリンクとかもあると面白いと思うなと。まあこれだけ書いても意味わからないと思いますが、そのあたりはそのうちどっかで書きたいなと思っています。

(おわり)

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