「ミクでひとつになれる」のがいいのか、悪いのか?――「初音ミク マジカルミライ2014」東京公演に行って来たったった

もう先々週になりますが、「初音ミク マジカルミライ2014」東京公演に行ってきました。

マジカルミライ

会場は代々木第一体育館。会場に入ってみたら写真撮影NGとのことでしたので、会場内の写真はありません。でも中は特に変わった演出はされておらず、ふつうにステージが前方にあり、ミクやその他のホログラムでキャラが登場し、演奏は生という、ミクのコンサートのいつものスタイルでした。

1.マジカルミライ2014のセットリストを振り返ってみる

まず駆け足でセットリストを振り返ってみようと思います。

開演時間を過ぎてもなかなか出てこないのでブツクサ言いながら待っていたら、客電が落ちてさっそくミクさん登場!

一曲目はこれでした!


▲じん(自然の敵P) Feat.初音ミク「カゲロウデイズ」のProject Diva F 2ndのPVバージョン。(※以下、本家のニコニコ動画のPVへのリンクを貼らなかったりしますがご容赦ください。)

お、お兄ちゃん!!!!ミクさんがギター弾いているよ!!!!!!

補足しておくとたぶん、いままでのミクのコンサートでカゲロウプロジェクトの曲をやったことはなかったのではないかと思います。(事前に調べてなかったけどこの1ヶ月前に行なわれた同じくマジカルミライの大阪公演では演っていたらしい。まあ、基本的には今回のマジカルミライが初ということじゃないでしょうか。)

詳しいセットリストはこちらに掲載されています。

その後は序盤はリン・レン曲の「スキキライ」(HoneyWorks)をやったり、前半でカゲプロとHoneyWorksを持ってきて、ボカロファンのなかでも特に若い層をちゃんとつかもうとしていましたね。

そのあと特にいいなと思ったのは「からくりピエロ」。この曲の衣裳は「リグレット」というやつですが、これ着ているミクさんがとてもかわいい!!


▲40mP Feat.初音ミク「からくりピエロ」

からくりピエロ
▲写真はPS VITA『初音ミク Project Diva F 2nd』から。

曲も改めていいなと思いました。

中盤は「Weekender Girl」「FREELY TOMORROW」「深海少女」「ピアノ×フォルテ×スキャンダル」などの定番曲や、ルカさんの「Hello, Worker」でひとしきり盛り上がっておりました。


▲KEI Feat.巡音ルカ「Hello, Worker」

実はこの「Hello, Worker」、就職活動をテーマにした曲なんですよね。ボカロといえばなんとなく「よくわからない電波ソングやってるんでしょ」的な見方もあると思いますし、一面でたしかにそういう部分もあるにはあるんですが、歌詞のテーマは実際は本当に多様です。(ちなみに私は電波ソングもけっこう好きです。)

で、この曲は就職活動をテーマにしているといっても、直木賞受賞作の『何者』(朝井リョウさん著)みたいな人間の暗部を描き出すようなものではなく、爽やかで若者らしい感じの歌です。

このテーマに関して、他の映画や漫画などのジャンルがちゃんと手を付けていないなかで、この曲は若者の憂鬱な気分をよく描けているんじゃないかな〜〜と思います。(蛇足ですが近年の大ヒットボカロ曲の「脳漿炸裂ガール」でも「面接バックレ〜」という歌詞がありました)

で、セットリストの話に戻ると。このパートの締めである「Tell Your World」のアンセム感はむしろ、若干浮いているかなぐらいに感じました。

そして終盤では、リンちゃんがギターで演奏する「東京テディベア」や、「ロミオとシンデレラ」のdorikoさんのロックチューン「キャットフード」など激し目な曲で畳み掛ける的な展開。

▲キャットフード。とても攻撃的なロックテイストな曲なんですが、歌詞では猫の飼い主に対する気持ちが表現されています。キメは「I say nya〜o」というフレーズ。なんだそれ。歌詞と曲調が一致していないところが海外のラブソングみたいで面白いです。ベースのティッシュ姫さんもいい仕事しています。

そして終盤、「ゆめゆめ」「shake it !」「39」あたりのミクコンサートアンセム。みんなで盛り上がろうよ!的な感じで終わっていきました。


▲ゆめゆめでミクさんが手をトン、トン、トンって上下に振りながら
腕を左右に動かすあの振付が非常に好きです。0:30あたりから。

アンセム系では「Odds & Ends」(ryo先生の曲)もいい曲で好きなんだけど、やっぱり「ゆめゆめ」「shake it !」「39」は非常にライブ映えする曲だなと思いました。

2.「もはやミクが踊っているだけでは非日常感がない」

もちろん好きな曲がたくさんかかったので自分自身はそれなりに楽しめたんですが、総じて、「フェス性」というか、お祭り感がないな〜と思ってしまいました。

もはやミクが踊ってるだけじゃ我々は非日常として感じないんだな、と。やっぱりこの種のものは見慣れるとちょっと感動が薄れていきますね。技術的にすっっっごい大変なんだとは思うんですけど、客目線でいうとどうしてもそう思ってしまいます……。

だからやっぱり、今回に関してはふつうのロックフェス行ったほうが楽しいんじゃねーかなと思ってしまいました。

たとえばミクのコンサートはクリプトン・フューチャー・メディアで出しているボーカロイド製品(初音ミク、鏡音リン・レン、巡音ルカ、KAITO、MEIKO)以外のキャラクターが出てこないんですが、そこにGUMI(これはクリプトンではなくインターネット社が発売しています)が出てくるとかだったらサプライズ感ありますし、他にも歌い手を巻き込むとか、じんやハチみたいな(DJではなく生演奏の)ライブもやるボカロPを巻き込むボカロフェスみたいなのだったらきっともっと楽しいんだろうな〜と思いました。

一方で、少し焦点を戻すと、全体的に曲を聞いていて思ったのが、こんなたくさん名曲があるのに世間の人たちは知らない。これはとんでもない損失だ! 世界の総幸福量はもっと増やせるはずだ!!!と思わざるを得ませんでした(確信)。

おそらくボカロファンでない人って、知ってても「メルト」「Tell Your World」、せいぜい「ブラック★ロックシューター」ぐらいしか知らないんじゃないかなぁ。

「TSUNAMI」とか「First Love」とか「女々しくて」は誰でも知ってるけど、「ロミオとシンデレラ」とか「メランコリック」を知っている人ってそんなに多くないわけです。


▲doriko Feat.初音ミク「ロミオとシンデレラ」


▲Junky Feat.鏡音リン「メランコリック」

日本のポップ・ミュージック史に残る数々の名曲がボカロから生まれているわけで、今の「ボカロはガキんちょとオタクのもの」的な風潮はもったいない。まあこれはアニソンもそうだと思うんですが、ボカロ曲はけっこうオーソドックスなつくりのものも多いので、オタク的な感性がなくてもハマれると思うんですけどね。

3.「ミクでひとつになれる」のがいいのか、悪いのか?

「お祭り感がないな〜」の話に戻ると。

やっぱり、ミクのコンサートって、「ミグヂャ〜〜ン!!!」という野太いオタクの人の歓声がけっこう特徴的だと思うんです。別にミクそこにいないのに、一生懸命声援を送っている。濃いオタク以外の人は若干引きつつも苦笑いみたいな空気なんですよね。「いや、ミクいねーし」と。これは来てる客の8割ぐらいが心の中で突っ込んでいると思います。この感覚がある種、ミクのコンサートを特徴づけていて、「なんじゃこりゃ」「面白いなぁ」「気持ち悪いなぁ」(失礼)という両義的な感覚を生んでいます。

で、非常に言いづらいのですが、なんというかクリプトンと初音ミクの目指す方向性はわりとクリーンというか、ピースフルな方向だと思います。

ミクコンサートのような公式感溢れるもの以外でのボカロ系のライブだと、Exit Tunesが歌い手やボカロPなどを多数起用した「ETA」というフェス的な試みを始めているんですが、これはどちらかというとクリーンというよりは猥雑というかニコ動的な感じで、クリプトンの目指したい方向性とちょっと違うんじゃないかなーという感じです。

ETA
▲http://etassa.jp/

つまりこっちのほうがリアル厨二的というか、ニコ動寄りなわけです。

で、思ったこと。

とりあえずこのクリプトン主催のマジカルミライは「ミク」で一つになれるというのはいいなと思いました。僕もキャラクターとしてのミクがすっごい好きなわけではないけど、嫌いなわけでもないし、「ミク」という旗印があると最大公約数的に盛り上がれる。

さきほどの「ミグヂャ〜〜ン!!!」勢力に対しても、「俺達に出来ないことを平然とやってのけるッ! そこにシビれる! あこがれるゥ!」的な憧れ半分、引きが半分の生暖かい気持ちで見守ることができるわけです。

でも、たとえばロキノン系のフェスとかに行くとわかるけど、やっぱりファン同士のつばぜり合い的な雰囲気は感じられるわけです。「RADWIMPSはいいけどきゃりーぱみゅぱみゅとかロッキンに来んなよ」的な殺伐とした感じです(昔でいうとミクシイコミュに「マナートピ」というものがあり、そこでマナーの悪かった他のお客さんへの罵詈雑言とかが延々と書かれてて怖かったんですけど、ああいう雰囲気はやっぱりリアルにも感じられます)。

で、現状の歌い手/ゲーム実況的、ポストカゲプロ的な文化を中心としたETAもそうなっていく可能性がある。つまり何が言いたいかというと、「ミグヂャ〜〜ン!!!」勢力が、リアル厨二の方々に「あいつらキモい」とマジレスされ駆逐されていってしまうかもしれない。

現に、カゲロウプロジェクトの後期のPVではお世辞にもあまり治安が良いとはいえない、ちょっと言葉を選ばずに言うと、子どもっぽい信者戦争みたいなことが起こっていました。ボカロ文化はやはりそういう方向に向かっていくというか、ロキノン的に排他的になっていくことは否めないのかな〜と。

だけどマジカルミライはとりあえず「ミク」という錦の御旗があって、ミク嫌いな人は少なくとも来てないわけです。なので会場の雰囲気そのものはすごく平和です。誰かの単独公演ではなくフェス的でありつつも、ピースフルな感じというのは、今の形態を崩しちゃうとなくなってしまうかもしれない。あれはお祭り感はないけれども、「初音ミク」を中心とした文化の良い所(信者構造が弱い、ピースフルな感じ)を表しているとも言える。

と、そうは言っても、GUMIのいる「ハッピーシンセサイザ」とか「いーあるふぁんくらぶ」がライブでかかったり、じんとかハチとか、はたまた9mmやバンプなど、ボカロと接続可能な既存の人たちとか、周辺文化である「ダンガンロンパ」のようなものも巻き込んだボカロフェスみたいなものも見てみたい気もしました。

(おわり)

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コメント

  1. marusuke より:

    はじめまして。
    大阪公演、東京公演と参加してきた者です。以下個人的な雑感などを書いてみたいと思います。

    大阪公演の特徴はなんといっても、ライブ以外にも展示スペースがあったことです。展示部分については、昨年のマジカルミライよりも洗練されていたように感じます。
    展示スペースのステージでは、ボカロPがDJしたりするなどマジカルミライのテーマである”文化祭”らしさも出ていて楽しかったです。
    東京でも展示をやっていれば、来た人はもっとお祭り気分が味わえたはずです。
    あと、イベント期間はライブの前日迄でしたが、キャピタルナレッジでやっていたイベントも大阪だけにしておくにはもったいない出来でした。
    正直、ライブ単体の東京公演は若干食い足りなさを感じてしまいました。もっとも、その後トリウッドで葵上が見れたので最終的にはおなか一杯になれましたが。

    とはいえライブについては、東京公演の方がよかったように感じます。会場の違いやバンドメンバーの慣れの問題ではないかと個人的には思っています。
    しかし、大阪公演にもいい所はありました。それは前座にアゴアニキさんが登場して場を盛り上げてくれたことです。やはりこういう前座は必要だと感じました。

    あと私も、バンプさんみたいに理解のあるバンドとライブでコラボしたりするのをもっと見てみたいと思います。
    ニコニコ超会議と超パーティは部分的にですが、わりとボカロフェスっぽい感じと思います。あれはあれで、なかなか楽しいですよ。